(1)
上図のような立方体を3つの点P,Q,Rを通る平面で切断します。その切断面を図中に書き入れ、その図形の形を答えなさい。ただし、点P,Q,Rはそれぞれ、辺AE,BF,CGの中点です。
(2)
上図のような立方体を3つの点A,S,Tを通る平面で切断します。その切断面を図中に書き入れ、その図形の形を答えなさい。ただし、点S,Tはそれぞれ、辺DC,BFの中点です。
(1)
正方形
(2)
長方形
「立体の切断は『図形のセンス』が必要だ」などと言われることがありますが、それはまちがっています。立体の切断にセンスは必要ありません。
立体の切断に必要なのはセンスではなく、ひとつひとつの知識を順番にしっかり覚えていくことです。そういう意味では、暗記に近いですし、焦らずにひとつひとつ理解していけば誰でもできるようになります。
気を付けてほしいのは、いきなり難しい問題を解かないことです。かんたんなものから積み上げていくことが大切です。前ページの内容を理解してから、このページの問題に取り組んでください。
立体の切断においてまず最初にすることは、『通ることがわかっている2点が、元の立体の同一平面上にあれば、それを結ぶこと(手順1)』です。これは立体の切断の基本中の基本です。
注意してほしいのは、ここでの同一平面上とは、元の立体の外側の面上のことです。元の立体の内側を通っているような面ではダメです。
一つずつ見ていきましょう。
問題文にある3点のP,Q,Rのうち、点Pと点Qに注目します。
この2点は、元の立方体の前側の面ABCDの上にのっています。これを『元の立体の同一外面上にある』と呼ぶことにします。これをつなぎます。
次に、点Qと点Rに注目すると、これも右側の面BFGCの上にのっていますね。つまり『元の立体の同一外面上にある』と言えます。ですから、これをつなぎます。
次ですが、残った点Pと点Rを、そのままつないでもよいでしょうか?試しにつないでみましょう。
点Pと点Rを結んだのが青い線ですが、これはいけませんね。青線が元の立方体の中を貫いてしまっています。『切断面の辺は元の立体の内部を通っていてはいけない(ルール1)』というのを覚えているでしょうか。忘れている生徒は前ページを見直してください。
前のページで説明したのですが、切断面は大きさが無限なので、途中で切るのをやめるのはダメなんです。図を見れば、青線の所で切ることを止めてしまっているのがわかりますね。
青い線は消して考え直しましょう。もう『通ることがわかっている2点が、元の立体の同一平面上にあれば、それを結ぶこと(手順1)』はできないので、『すでにわかっている点を始点にして、向かい側の面にある線と平行になるように、線をひく(手順2)』という手順に進みます。難しそうに聞こえますが、そんなことはありません。
上図のように、面BFGCと面AEHDは向かい合っていますね。この2面は平行です。
ですから、QRと平行になるように、点Pから始めて線を引きます。それが赤線です。赤線と辺DHが交わった所に新しい点ができますね。それを点Iと決めます。
QRとPIは平行になっているので、Iは辺DHの中点になります。点P,Q,R,Iは、全部中点ですね。
あとは簡単です。新しい点Iができたのですが、点Iと点Rは、どちらも後ろ側の面DHGCの上にのっています。ですから、手順1に戻って、点Iと点Rを直接つなげば終わりです。
この切断面IPQRは、底面HEFGとや上側の面DABCと平行で、しかも合同ですね。合同というのは、形も大きさもまったく同じという意味です。
立方体の外側の面は、全部が正方形なので、切断面も正方形と言えます。
すべての辺が同じ長さで、すべての角が90度だから、正方形である、とも言えますね。
これまでとやることは変わりません。まずは『通ることがわかっている2点が、元の立体の同一平面上にあれば、それを結ぶこと(手順1)』をするんでしたね。問題に示されている点A,S,Tのうち、同一外面上にある点を探しましょう。
上図のように、上側の面ABCD上に、点Aと点Sの両方がのっているので、同一外面上にあるといえます。これをそのままつなぎます(赤線)。
次に、上図のように、後ろ側の面DHGC上に、点Sと点Tがのっているので、これをつなぎます。
その次に点Aと点Tに注目します。上図の青線のように、直接つないではいけないんでしたね。『切断面の辺は元の立体の内部を通っていてはいけない(ルール1)』というルールを覚えているでしょうか。直線ATが元の立方体の内部を貫いてしまうので、そのままつなぐことはできないんです。
そこで、青線を消して、次の手順に進みます。
『すでにわかっている点を始点にして、向かい側の面にある線と平行になるように、線をひく(手順2)』ですね。これの意味がわからない生徒は、前ページの(2)とこのページの(1)をよく読んでください。
上の面ABCDと、下の面EFGHは、向かい合っている平行の面です。
切断面は点Tを通ることがわかっているのですから、点Tを通って、直線ASと平行になるように、面EFGH上に線をひきます(上図の赤線)。
この時、向かい合う平面上には相似の三角形ができることに注意してください。
上図は、立体の上の面と下の面を、真上から見たものです。こうして見た時に、三角形DASと三角形HETが相似になるということです。相似なので、できあがる三角形の縦と横の比が同じになります。
今回の問題では上下の三角形が、相似であるだけでなく、合同になります。相似というのは形が同じという意味で、合同というのは形と大きさの両方が同じという意味です。
もう一度、順番に説明します。
もともとできている三角形DASの縦DAと横DCの比は2:1なので、下の面にできる三角形の縦と横の比も2:1になるということです。
今、下の三角形の横の長さHTはDSと同じ①だとわかっているので、縦の長さもDAと同じ②になります。すると、Tから引いた線が自然とEを通ることがわかります。
このようにして切断面はEを通ることがわかったので、あとは『通ることがわかっている2点が、元の立体の同一平面上にあれば、それを結ぶこと(手順1)』に戻ることができます。
EとAは同一平面上にあります。AEFB上でもありますし、DHEA上でもありますね。EAが2つの平面の交わる線になっているからです。
同一平面上にあるのですから、EとAはそのままつないでしまってかまいません(上図の赤線)。
これでできました。切断面はAETSですね。
この切断面の四角形AETSは特殊な四角形と言えるでしょうか。
まずは、ASとETは平行です。そうなるように引いたのですから当然ですね。またAEとSTも平行です。向かい合う辺2組が平行ですから、AETSは平行四辺形というところまではわかります。
次に、対角線を見てみましょう。ATとESの長さは等しいですね。平行四辺形だということがわかっていて、さらに対角線の長さが等しいのですから、長方形か正方形だとわかります。
最後に、となり合う辺の長さASとAEの長さが同じかどうか、見ていきましょう。
今、AEとADは同じ長さです(赤線)。またADとASを比べると、ASの方が長いですね。ということは、AEとASを比べても、ASの方が長いということになります。
長方形か正方形だと分かっていて、となり合う辺の長さが違うのですから、AETSは長方形だと決まります。
上図のような流れで、四角形の形を決めてもよいでしょう。このような順番で見ることで、少しずつ可能性を絞っていくことができます。
もう一度まとめると、今回の切断面の四角形は
という特徴があるので、長方形だとわかります。