小学6年生にお勧めの本(中学受験向け)

  • 読書が大切と分かっていても、何を読めば(読ませれば)よいか分からない生徒(ご両親)の参考になればよいと思い、まとめました。
  • 啓発本や芸能人の書いた本の類は百害あって一理なしです。
  • 漫画も語彙を増やしたり、熱中できるという意味では悪くないですが、やはり本がよいでしょう。
  • 入試に出題されたもの、塾のテストやテキストで出題されたもの、多くの生徒が読んでいるものから選んでいます。
  • 随時追加していきます。

 

目次

1.  説明文

2.  物語文(海外)

3.  物語文(日本)

 

1.  説明文

 
  • 難易度:★★☆☆☆(2/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★☆☆(3/5)
  • 女子向けオススメ度:★★☆☆☆(2/5)
  • 出題元:SAPIXの4年生の国語テキスト
  • 筆者について:
  • この文章について:
  • 『』

 

 

2.  物語文(海外)

ジーン=ストラトン=ポーター『そばかすの少年』

 
  • 難易度:★★★★☆(4/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★★★(5/5)
  • 女子向けオススメ度:★★★★★(5/5)
  • 出題元:慶應中等部の入試問題
  • 作者について:1800年代生まれのアメリカ人の作家です。作品に出てくるバードレディーのように、リンバロストの森で鳥の写真を撮り、小説を書いた。
  • この作品について:片手を失った孤児のそばかすが、リンバロストの森で強く生きていく。今の日本では考えられないような環境なので、読み間違いをしやすいものです。こうした時代も地域も、日本とはかけはなれた小説に慣れておくのがよいでしょう。冒険小説のようにワクワクします。登場人物が温かく、文章自体も知的で味わいがあります。お勧めです。
  • 『そばかすはリンバロストの森のはずれに、丸太をならべてつくってある道を渡ってきた。見たところ浮浪者とまちがえられそうな姿であったが、本気で仕事を探しているのだった。どこの職場であろうと衣と食をあてがってもらえさえすれば、どんな仕事でもいい、一心に打ち込みたいと思っていた。「支配人にお会いしたいんですが」料理番はちらっと目をくれてから、「お前さんなんざ、使ってもらえねえよ」と、ぞんざいな口のききかたをした。そばかすの頬にさっと血がのぼったが、しかし、あっさり言葉を続けた。「どれが支配人だか教えてさえくれれば、あとはじかに話しますよ」』

 

3.  物語文(国内)

安岡章太郎『逆立』

  • 難易度:★★★☆☆(3/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★★★(5/5)
  • 女子向けオススメ度:★★★★★(5/5)
  • 出題元:早大学院の入試問題(2018)
  • 作者について:戦後日本を代表する作家。子供向けの文を書く人ではないので注意が必要。芥川賞を受賞しているが、賞など関係なく素晴らしい作家。
  • この作者の他作品:『サアカスの馬』は子供でも読みやすくおすすめ。
  • この作品について:三田文学短編選に収められた短編。三田文学はその名の通り慶應大学の文学サークルだが、早大学院の入試問題でこれを出してくるというのが、面白い。早大学院の先生が質の高い読書をしている方だと分かる選択。少し古い言い回しが出てくるのと、味わい深い文章なので、こうした本格的な文学に普段から触れていない(本を読むのは受験勉強としてだけの)生徒には難しいはず。この短編集は戦後の日本の良質な文学に触れる入り口としてちょうどよい。
  • 『予定通りその翌日、K高原を引き上げたので僕は、ついに少女の名前も何も知りえなかった。土地の事情にくわしいはずのF君も、顔を二三度みかけたという以上には知らなかった。そして僕は忘れるともなく一切、忘れてしまっていた。秋おそく、友人たちと上野へ展覧会をみに行ったとき、美術館の中で僕は突然、あの少女をおもい出した。それはいままでになくハッキリした恋情だった。』

 

水野瑠見『星光る』

  • 難易度:★★☆☆☆(2/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★☆☆(3/5)
  • 女子向けオススメ度:★★★★☆(4/5)
  • 出題元:早稲アカのテキスト
  • 作者について:児童文学作家。
  • この作品について:小学6年生向けにちょうどよい。わかりやすい設定ながら、いじめという少し重い内容を扱い、しかもさらっとしている。今っぽい小説に触れたいのならおすすめ。読書好きの女子は気に入ることまちがいなし。
  • 『「・・・この学校ってさ、いい人、多いじゃん」「は?」何言ってんだこいつ、と俺は思った。勉強できるくせに、バカなのか?「いや、うん。矢代くんの言いたいことは分かるよ。分かるけど」俺のあきれた表情を読んでか、百井は、あわてたように言葉をつぐ。「でもやっぱ、基本いい人たちだと思うんだ。だって今までうちのクラス、あからさまないじめってなかったじゃん。っていうかさ、僕、前に住んでた町では、もっとロコツないじめ受けてたし。みんな根はいい人たちだから、あの場で僕がフォローしておいたほうがいいのか、って思ったんだよね。そのほうが、良心にうったえられそう、っていうか」』

 

重松清『小学五年生』

  • 難易度:★☆☆☆☆(1/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★☆☆(3/5)
  • 女子向けオススメ度:★★☆☆☆(2/5)
  • 出題元:多くの入試問題。早稲アカのテキスト
  • 作者について:人気作家。子供向けのものが多い。
  • この作品について:少年の心理だけに注目して、背景や季節感や周辺人物を徹底的に捨象している。それでも違和感なく、リアルであるのは作者の筆力による。余計な要素がないので読みやすく、心理を答える問題の練習として読んでみるとよい。題名の通り、5年生を想定しているので、6年生には少し簡単に感じられるかもしれない。
  • 『買い足した回数券の三冊目が—もうすぐ終わる。少年は父に「迎えに来て」とねだるようになった。車で通勤している父に、会社帰りに病院に寄ってもらって一緒に帰れば、回数券を使わずにすむ。「今日は残業で遅くなるんだけどな」と父が言っても、「いい、待ってるから」とねばった。母から看護師さんに頼んでもらって、面会時間の過ぎたあとも病室で父を待つ日もあった。それでも、行きのバスで回数券は一枚ずつ減っていく。明日からお小遣いでバスに乗ることにした。毎月のお小遣いは千円だからしばらくはだいじょうぶだろう。』

 

伊吹有喜『雲を紡ぐ』

  • 難易度:★★★☆☆(3/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★☆☆(3/5)
  • 女子向けオススメ度:★★★★★(5/5)
  • 出題元:サピックスの5年テキスト。6年のテスト。
  • 作者について:直木賞候補にもなった作家。しっかりした心理描写と雰囲気のある情景描写。
  • この作品について:多感な時期の女生徒と、問題を抱えた母、3世代にわたってうまく行かない家族について描いている。辛さや重さが感じられるテーマだが、東北の羊毛工場と優しい人間関係という要素の暖かさが、小説全体を包み込んでいる。本好きの女生徒におすすめ。主人公が中学生ということもあり、精神年齢の低めの男子生徒には難しく感じられるかもしれない。
  • 引用『「おじいちゃん、私ね、笑いが顔にくっついてるの。仮面みたいにペタッと貼り付いてる。楽しくなくても笑う。つらくても笑う。笑っちゃいけないときも無意識にへらへら笑ってる。頭、おかしいよね」「そんなふうに言うもんじゃない。いつからだ?」目を閉じて力を抜き、美緒は羊毛に身をゆだねてみる。気持ちが楽になってきた。「わかんない。でも小学校の頃から、かな。人の目が怖い。不機嫌な人が怖い。だから嫌われないように『オールウェイズ スマイル』。いつもニコニコしてた。」』

 

辻仁成『そこに僕はいた』

  • 難易度:★★★☆☆(3/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★★★(5/5)
  • 女子向けオススメ度:★★★★☆(4/5)
  • 出題元:サピックスの5年テキスト。
  • 作者について:芥川賞だけでなく、フランスでも受賞歴がある有名作家。キャッチーなのに安っぽくなく、繊細で、真実味のある文章。
  • この作品について:作者の少年〜青年時代を描いたエッセイ。エッセイとあるが、文体は物語文に近い。受験ではほとんど物語文として登場する。以下の引用は『そこに僕はいた』というこのエッセイ集の表題作。
  • 『思い起こせば、僕には片足の友達がいた。あの少年とどうして仲良しになったのかは思い出せない。気がついたら僕たちのグループの中にいたのだ。片足の少年の名字は何故かもう思い出せない。あーちゃんと呼んでいたのでそっちの印象の方が強いのだろう。あーちゃんは右足の付け根から先が義足だった。走るたびに義足の金具の音がきいきいと響いた。僕は最初その音がすごくいやだったのを覚えている。歯医者の治療器具の音のように耳奥を引っかいたからだ。』
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ryuju