国語が苦手な生徒は、やたらと『論理』を標榜する読解法や、本文にたくさんの記号を付けていく読解法に救いを求めます。しかしこれで成績が上がった生徒は見たことがありません。というのも、接続詞や人物に丸や三角をつけることに必死になったり、選択肢の間違い探しをしている間は、生徒の注意は本文から離れてしまっているからです。こうした姿勢は、本を読む・文章を読むということの本質から、生徒をますます遠ざけています。
また国語の苦手なご両親ほど、『いかに解くか』を気にされます。「良い解き方を教えてください」「解き方のコツを教えてください」「選択肢の選び方を教えてください」「全部読んでから解くのですか?先に問題を見るのですか?」などなど。しかし『設問の解き方』は国語において瑣末なことです。というのも国語の本質は『本文をいかに読むか』だからです。
国語は算数とは違います。『こういう問題はこういう公式を利用して解く』などという発想は、国語の本質から外れており(本当は算数でも良くない)、子供を国語嫌い・本嫌いにするだけです。国語の苦手な生徒は、解き方が分かっていないのではなく、本文が読めていないのです。解き方のコツのようなものは確かにありますが、それは受験の直前でいいですし、本文が読めてないものはコツを知っていても解けません。『いかに解くか』は勉強の中心ではないはずなのです。
国語の本質は、説明文なら『筆者は何を伝えたいのか』、物語文なら『どんなストーリーだったのか』、そしてそれを読んで『自分がどう感じたか』ということです。つまり要約と感想です。
国語とは文字を使用したコミュニケーションです。ですから『相手が何を言いたいのかを読み取り(読解)』、『それに対して自分はどう感じ、それをどう相手に伝えるのか(記述)』を常に意識した勉強が大切です。
そして、しっかりした学校ほど、そこを逃さずに設問にします。中学ならば開成・麻布・桜蔭、大学ならば東大・京大の問題を見れば明らかです。『論理を身につければ国語の問題はすぐに解けるようになる』と標榜する読解法は、『聞き流すだけで英語ができるようになる』式の甘い罠です。つまりそうした教材や教育法は儲かるんですね。中堅以下の学校を目指し、今30点のテストを50点にしたいのであれば、『選択肢をいかに消すか』などの方法論に集中しても悪くはないかもしれません・・・
では本当に国語ができる生徒を養成するには、結局どうすればいいのか。簡単です。
ただそれだけです。そしてそれ以外にありません。これをしない生徒が東大に合格することはありません。それは理系の生徒であっても同じです。こうした勉強法は、語彙を自然と増やし、『思考の型』『ストーリー展開のヴァリエーション』『(本当の)論理の流れの典型』について体に染み込ませる役に立ちます。
ほとんどの教材や、レベルの低い学校の問題は、本文の主旨と何の関係もない設問が多すぎて、また設問の空欄が多すぎて、読書をつまらなくしてしまいます。2ページの本文にびっしりと傍線と空欄があり、10題の紛らわしい選択問題があれば、読む気がなくなって当然です。10ページの本文を読んで、1問の記述問題に答える方がずっと有意義です。もちろん試験では設問が多くても仕方ありませんが。
僕が算数を教えていたある生徒のお母様は、「塾の国語はやらなくていいから、毎日私が指定した文章を読んで要約を書きなさい」とその生徒に言って、それだけをずっとさせていました。そして見事桜蔭に合格しました。もちろん生徒の才能など、色々な条件あってのことですが、国語の勉強の本質をついていると感心しました。
僕自身、新聞のコラムを読んで要約と感想を書くという勉強を、小学校と中学校の間、母から半ば強制的にやらされていました。しかし僕がどんな的外れなことを書いても、母は何も言いませんでした。その成果とは限りませんが、僕は本が大好きになり、早慶はもちろん東大の国語でも苦労したことはありませんでした。
そうした本質的な国語の勉強を生徒にしてもらいたいのですが、なかなか良い教材がないな、と感じています。サピックスの問題は良問が多いのですが、設問が多すぎるし、解答の自由度がなさすぎる気がしています。そこで試験的に教材を1つ作ってみました。家庭教師としての日々の指導が忙しすぎる上に、作りたい教材が多すぎて、次が続くか分かりませんが、シェアしてみようと思います。
注意点:
出典は石田衣良さんの4TEENです。直木賞受賞作品ですね。渋幕の過去問でもあります。生徒が少しでも気に入った様子であったり、物語の前後が気になる様子であれば、ぜひ全体を読み通すよう勧めてあげてください。
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