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SAPIX 2020年3月の組分けテスト(新6年)

かなり難しかったですね。新学年のはじめにガツンとショックを与えられた方も多かったのではないでしょうか。平均点はマンスリーよりもかなり下がると思います。

思考力・読解力が必要な問題が多く、難関中学の受験本番に向けて、塾もいよいよ本気モードといった所です。僕も生徒に口を酸っぱくして言っているのですが、難関中学の受験本番は『知ってる問題は出ない』『自分で諦めずに読み解くしかない』『知っている技(解法や知識)のどれを利用できるか自分で考えるしかない』んですよね。

では「読解力問題や思考力問題はどうやれば解けるようになるか」という問題ですが、応用問題であっても基礎知識が「基」になっているわけです。元も子もない言い方ですが、基本問題を徹底的に理解することが、応用問題ができるようになるコツです。「一発逆転の裏技のような解法で急に難しい問題が解けるようになる」と謳う教材や塾などは信用してはいけません。できない子の家ほどそうした種類の本(や啓発本の類)が溢れています。

あえてもう一つ言うならば、応用問題も実は大したことがない(基本的な解法の組み合わせでしかない)、ということを実感することが重要ですが、それはなかなかご家庭では難しいので、まずは基本を押さえる、これしかありません。

今回の組分けテストを復習するに当たって、単に点数だけで判断するのではなく、しっかりと分析して、基本問題で解けなかった所と読み解けずに解けなかった所を分けて考えるのがよいでしょう。そしてもちろん基本問題で解けなかった所をしっかり復習するべきです。その積み重ねによって少しずつ難しい問題にも手がつけられるようになってきます。

僕の生徒でも簡単な問題をしっかり解くようにして、実力が付いてくると、毎週のテキストにかかる時間が短くなってきます。そうすると、生徒の方から「今まで解かなかった思考力問題を解きたい!」と言ってきます。そして余裕と自信を持って問題を読み込んでみると意外と解ける→とても嬉しい!という良い循環が生まれます。

以下、教科別に気になった問題を少しだけピックアップします。

算数

$$(10.125÷4.5+1.25)÷ ▭ =2.8$$

大問1の(2)です。後半に難しい問題が多かった今回のテストで、絶対に間違えてはいけない問題ですが、「8分の1の利用」を使わずに、筆算すると高確率で間違えます

「8分の1の利用」の練習問題のページを作成しました。

小学生の算数では、数学に馴染んだ大人からすると、不思議な約束事が存在します。僕が生徒に絶対に守らせる算数の約束事の代表が『3.14は一回まで』と『8分の1は必ず利用』があります。これを守らないと答えが合っていてもバツにすると最初から宣言しています。大人からすると、馬鹿馬鹿しい約束事ですが、こうした約束事にはそれなりの理由があります。ごく簡単に言えば、「そうしないと間違えるから」です。そしてそうした間違いを誘発するために意図的に作られた問題が存在するからです。

$$10.125=10\frac {1}{8}=\frac {81}{8} $$

$$4.5=4\frac {1}{2}=\frac {9}{2} $$

$$1.25=1\frac {1}{4}=\frac {5}{4} $$

$$2.8=2\frac {4}{5}=\frac {14}{5} $$

以上のように、小数を分数に置き換えて、さらに過分数に置き換えてから計算を始める事です。絶対に守らせるようにしましょう。

ちなみに答えは$$1\frac {1}{4}$$ ですね。

「8分の1の利用」の練習問題はこちらからどうぞ。

国語

国語は他教科に比べれば解きやすかったのではないでしょうか。苦戦した生徒は国語の勉強を根本的に考え直す必要があります。以下の問題を見てください。

どうしてよく守られ、よく任されることが心を強くするのだろうか。これには自尊感情や自己肯定感、さらには主体性というものが深く関係している。

親によく守られていると、子供は「自分は重要な存在である」という自尊感情や、「自分はあるがままの自分でいいんだ」という自己肯定感を強く持つようになる。精神的に安定した自分というものを獲得できるのだ。

【 A 】、よく任されると、自分のしたいことが自由にできるようになる。これをしたいと思ったら、することができる。自分の判断で、やるかやらないかを決めることができる。つまり主体性が鍛えられてくる。

Aに入る接続詞を選ぶ問題です。答えは「そして」です。

これは大問の3(説明文)の書き出しですが、国語の苦手な生徒は、最初からちんぷんかんぷんだったのではないでしょうか。

多くのご両親は、この問題が解けなかった子供に対して、この文章構造を論理的に説明しようとするでしょう。そして「なんでこんなにも綺麗な論理関係が分からないんだ!」とイラつくのではないでしょうか。結果「国語は論理である!」といった本を買い与えたりします。国語に苦手意識のあるご両親がこうした本に手を出しがちです。数学のように国語を解こうとするんですね。ですが、こうした対策は間違いです。

僕が思うに、国語は論理ではありません。少なくとも、この文に表れているような(あるいは数学やプログラミング言語のような)単純な論理ではありません。国語のできる生徒や、この文が理解できる大人は、第一段落の段階で、第二段落と第三段落の内容が分かっている(あるいは大体予想できている)んです。第二段落や第三段落は、「ふんふん、やっぱりそういう意味ね」と確認しながら、読んでいるに過ぎません。

この問題が解けなかった生徒に足りないのは論理力ではありません。数学的な単純な論理力で国語の問題が解けるのであれば、算数が得意な生徒が国語も得意であるという、明らかに現実に反する結論が「論理的に」導き出されてしまいます。

国語は何なのか、という問いに意味があるかは分かりませんが、あえて言うならば、「語彙や概念の蓄積」です。例えば今回のテストの問題に関して、親や教師が教えるべきなのは論理や解法ではなく、「親に守られるとはたとえばどういうことか」「よく任されることとはたとえばどういうことか」「自尊感情とはたとえばどういう気持ちか」「自己肯定感とはたとえば」「主体性とはたとえば・・・」「精神的に安定した自分は・・・」を説明してあげることです。

こうした言葉の意味や概念を知らない生徒に、論理を説いても無意味ですし、そもそも第一段落を一読した段階で、「うん、分からないから適当に解こう」と心が折れているはずです。

つまり大切なのは本文を分かりやすく噛み砕いて、一緒に読んであげることです。絵本の読み聞かせのようなものです。国語の本質はそこにあると僕は思っています。

なかなかご両親が教えてあげられない場合は、レベルのちょうどいい本をたくさん読む事です。自然と語彙や概念が蓄積されていきますし、典型的な話の流れ・構造(これを論理といってもいいでしょう)も理解できるようになってきます。読書量やご両親の語りかけの量がそのまま国語力です。

今回の国語のテストの他の問題でもそれが分かります。以下の問題を見て下さい。

 ▭ にひらがな一字を入れなさい。

(1) この程度の故障の修理ならば、 ▭ やすいものだ。

(2) はずかしがり屋の彼は、先生に指名されると ▭ 細い声で答えた。

(3) 弟はいつも ▭ ざかしい口をきいては、両親におこられている。

これは大問の2です(多少改題)。この問題はいわゆる知識や論理で解くことはできませんよね。読書量やご両親が使う語彙量で決まる問題です。

答えは「た」「か」「こ」です

理科

大問3のⅡの(3)です。自転車の構造の話になっていますが、結局は輪軸の問題です。問題文と図6と図7があるせいで、難しく感じてしまう人がいるでしょう。

図8と図9の「チェーンにかかる力」が同じ大きさになるということさえ、分かっていれば、ほとんどの人が解けるのではないでしょうか。

「ペダルをふむ力」が10kgなので、輪軸を時計回りに回すモーメントが200です。したがって200÷10=20より、「チェーンにかかる力」は20kgになります。ここまでが図8です。上の図のように、輪軸はてこの問題と捉えればさらに簡単で、誰でも解けるでしょう。

次に図9において「チェーンにかかる力」が20kgなので、輪軸を時計回りに回すモーメントが100になります。したがって100÷25=4より、「後輪にかかる力」は4kgになります。

答えは①=20、②=4ですね。

社会

オリンピック関連の問題が出ていましたね。オリンピックの問題は今年、どの学校でも出題してくるでしょう。オリンピックは日本地理、世界地理、日本の歴史、世界の歴史、政治の全てに関連付けられるので、問題が作りやすいんですよね。

特に今回のサピックスの問題のように、世界地理との関わりが出やすいと僕は予想しています。というのも、世界地理はご家庭の勉強に対する意識が如実に現れる分野だからです。

世界地理や世界史は塾で体系的に教えにくい分野です。ご家庭でことあるごとに、話をしたり、地図と結び付けたり、この問題のように写真を見せたり、旅行に行ったりすることが重要でしょう。

答えはもちろんウです。ギリシャのアテネのパルテノン神殿ですね。ギリシャがどこにあるか地図で確認し、アテネで行われた古代の民主制、ギリシャ神話、現代ギリシャの経済などについて話しましょう。その他の写真もどの国のどういった建物で、どういった歴史上の価値があり、その国がどこにあるかを親子で話し合うといいでしょう。世界の国を紹介する図鑑のようなものを一冊家に置いておくこと、世界地図と地球儀を手の届くところに置いておくことも重要です。

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