最近、理科の指導で、アゲハチョウの蛹(さなぎ)に関する質問を受けました。SAPIXのテキストに、『1月の蛹は茶色で、周りには他の成虫はいない』というような選択肢を選ばせる問題があったんですね。
僕自身、アゲハチョウの生態についてしっかり理解していなかったので、ここにまとめておこうと思います。
アゲハチョウの一生の流れはこんな感じです。
① 卵
② 幼虫(葉っぱを食べる・何度も脱皮して大きくなる・1ヶ月ほど)
③ 蛹(2週間ほど)
④ 羽化して成虫になる(交尾・産卵して2週間ほどで死ぬ)
このサイクルでいけば、2ヶ月ほどで世代交代が行われることになります。
世代交代とは、簡単に言うと、お父さんの活躍する時代が終わって、自分が活躍する時代になることです。あるいは自分が活躍する時代が終わって、自分の子供が活躍する時代になることです。
人間の場合、自分が大人になって仕事をし始めても、お父さんはまだバリバリ働いていますね。だから人間は何世代も同時に生きているし、活躍しているわけです。
ですが、アゲハチョウは産卵して数週間で死んでしまうので、世代の移り変わりがはっきりしています。
アゲハチョウは冬以外には活動できるそうです。もちろん地域差や種類の差はあるでしょうが。そして世代交代は2ヶ月ほどで行われるので、1年に何世代も下ることになりますね。
たとえば4月に羽化する→その子供が6月に羽化する→そのまた子供が8月に羽化する→またその子供が10月に羽化する、といった感じです。
ただし10月くらいに羽化したアゲハチョウから生まれた幼虫たちは、蛹(さなぎ)になってもすぐ羽化しません。なぜかというと、冬に羽化してチョウチョになっても、エサとなる花の蜜はないし寒いしで、いいことがない(生き残る確率が低い)からですね。
こうして冬の間は蛹のままでやり過ごすわけです。こうして越冬(えっとう)する蛹は茶色になります。
1に書いた通り、普通の蛹は2週間ほどで羽化します。羽化とは蛹から出てチョウチョになることですね。こういう普通の蛹は緑色をしています。周りに緑が溢れている時期だから、緑でいるほうが目立たなくて良いんです。
蛹は動けないので、他の動物に食べられやすいんですね。狸や狐や時には人間も蛹を食べますし、鳥や他の昆虫も蛹を食べます。蛹は他の動物にとってごちそうなんです。だからできるだけ目立たないように、環境に溶け込む色をしているんです。
そして2に書いた通り、秋の終わりから冬に蛹になった個体は、茶色をしています。茶褐色(ちゃかっしょく)と言ってもいいです。つまり冬の間の枯れ枝や枯葉に似た色です。こうして目立たないようにして、身を守っているんですね。
いかがでしょうか。以上はあくまでアゲハチョウの生態です。種類によって一生のサイクルが全く異なるようなので、注意してください。