『サピックスは下のクラスの子の指導に熱心でない』というのは、ずっと前から言われていますね。これは本当なのでしょうか。
結論から言うと、そんなことはないと思います。下のクラスの先生も、なんとか生徒の成績を上げたいと頑張っていらっしゃいますし、SAPIXに通っている僕の生徒を見ていても、たとえクラスが下でもいい加減な指導を受けているとは感じません。塾としてもこうした不名誉な言われ方を払拭しようとしているはずです。
ではなぜ、そんなことを言われてしまうのでしょうか。僕は主に3つの理由があると考えています。
① 心理的な理由
『成績が伸び悩んで下のクラスにいる(勉強ができるようにならない)』→『子供の才能は間違いなくある』『両親も最大限頑張っている』→『ならば塾が悪いのでは』→『SAPIXは結果を出している塾なので塾全体のせいにするわけにもいかない』→『SAPIXの下のクラスの指導が悪い』といった論理に、無意識に賛同してしまっているのかもしれません。
塾のクラスが上がらないと、親子にとってかなりのストレスになります。その矛先が塾に向いてしまうんですね。
② 塾内講師ランク的な理由
どの塾であっても、実績のあるベテラン講師が上のクラスを担当するのは同じです。新人講師や実績のない講師が、開成や桜蔭のクラスを担当するなど、ありえません。
そういう意味で言えば、サピックスで下のクラスの子が他塾では上のクラスに入る可能性があるわけで、新しい塾ではランクが上の先生に担当してもらえる可能性はあります。
③生徒の態度が悪い可能性
生徒の方の授業態度が悪かったり、講師の出す課題をこなしていない場合、「成績が上がらないんですけど?」と言われても、講師としてもどうすることもできません。塾講師は激務(ブラック)として有名なくらいですから、「まずは言われたことやってね」と考えてしまうのは、どの塾でも変わりのないことだと思います。
生活習慣や勉強態度をしっかりした上で、課題が多すぎたり難しすぎる場合には、各科目の講師に面談を依頼して、直接相談しましょう。きっと親身に対応してくれると思います。
またどの塾も、塾のイベントとして決まっている面談がなくても、電話で依頼すれば面談に応じてくれると思います。4・5年のうちは塾の先生に会う機会も少ないと思いますが、一度会って話をしておくと、様々な疑念もすっきりしますし、先生の方も注意してその子を見てくれるようになります。ただし、頻繁すぎる面談や長すぎる面談は控えましょう。
SAPIXの実績と指導の安定感は否定できないと思います。僕の生徒でも、下のクラスであっても、最後までやりぬいた子は、中学・高校になってもSAPIXでの頑張りを誇りに思っている子が多いです。
ただし、SAPIXは良いといっても、結局は担当する先生の資質によるものが大きいです。どの塾にも良い先生と良くない先生がいます。実績があって、上のクラスを担当していても、「う~ん・・・」と思ってしまうような指導をする先生もいます。これはどんな組織でも同じです。もちろん生徒との相性も大切です。
SAPIXが合わないと思えば、思い切って転塾するのもいいでしょう。もう少しリラックスして勉強できるようになるかもしれません。ただし、生徒に対して「先生がダメだからやめる」「塾がダメだからやめる」などということを言わない方がいいです。勉強ができないのを他人のせいにする癖がついてしまうからです。ご両親も、こうしたことを言いつづけていると、我が子の成績が伸びないのを、塾や学校や先生のせいにする癖がついてしまいます。また何度も何度も塾(個別指導・家庭教師)を変えるのも良くありません。
転塾しないでSAPIXにとどまって頑張るのであれば、クラスが低いからといって、生徒の自信を奪うようなことを言わないことが大切です。SAPIXで下のクラスでも、全国的に見れば優秀な生徒です。精神年齢が上がったり、勉強が軌道に乗れば、将来は良い大学にだって入れるかもしれません。勉強が嫌いになったり、自信を喪失させるようなことを言い続けると、そうした可能性を奪ってしまうことになります。