先生、こんにちは。先日の組分けテストで撃沈しました。自己採点はまだですが、息子はAクラスになるという夢をみたそうです。
5年生の最初にはαクラスにいたのですが、ズルズルとクラスが下がり、現在の偏差値は40代後半です。息子はやる気だけはあってずっと机に向かっているのですが、努力が報われず、親としてはどうしてあげればよいのだろうと悩んでいます。
算数の基礎トレは本人に任せており、毎日満点なので安心していたのですが、2週間ほど前に答えを写していたことが判明しました。そのため今回の組分けテストの前に、一年分の基礎トレをしっかりやり直し、苦手な早さの問題や点の移動のテキストのやり直しをしました。それ以外にもベイシックを解かせ、間違えた問題は親がチェックして整理し、解けるようになるまで繰り返し解かせました。
理社は、5年生の全てのマンスリーと5年生の全てのテキストを解き直しさせました。社会は白地図で忘れていそうな平野や川、新幹線の名前などを自分でやりなおしていました。その割には理科は全く解けなかったそうです。
算数は、珍しく最後の7⃞の問題を書き出して試行錯誤して答えられて喜んでいましたが、配点が3点だったそうでまた落ち込んでいます。
息子はテキストそのままの問題は解けるのですが、少しひねった問題では手が止まってしまい、チャレンジできません。図を書くなどしてくれたらよいのですが。できたはずの問題も1ヶ月もすると忘れてしまいます。
その場で読んで、理解して、持っている知識を使いつつ答えるということが出来ないとダメなのだと思うのですが、これを出来るようにするのは一体どのようにしたら良いのでしょうか。
夢を見るくらいプレッシャーを強く感じているのですね。それだけ頑張っているということだと思います。
今回の組分けテストへの取り組みを伺った限り、良い勉強と悪い勉強が混じっています。前提として、SAPIXの組分けテストは生徒の学力そのものが問われるテストです。入塾からこれまでにやってきたことの全てが点数に表れますし、もっと言えば、生まれてからこれまでに積み重ねてきた勉強・経験・思考法が総合的に試されます。ですから直前に頑張ってもすぐに結果が出るようなものではありません。
例えば基礎トレは、毎朝何年間も継続して取り組むことが重要です。フレッシュな状態で頭を使って、集中して、理解を伴うように勉強することが大切なのであって、直前に一気にやったとしても、同じ効果があるわけではありません。ちなみに答えを写していたこと自体を強く叱る必要はありません。今後答えが絶対に見れないようにしてください。
『今回頑張ったのに結果が出なかった』と落ち込むのは間違っています。「正しい勉強を何ヶ月も続けて、やっと効果が出始めるんだよ」とお伝え下さい。特に組分けは決まった範囲が出るわけではないし、その場で考える問題が多いので、その傾向が強いです。付け焼き刃は通用しないんですね。
その意味で、組分けの前にあまりに広い範囲をおさらいするのは、良い勉強とは言えません。テスト直前にある程度広い範囲を勉強するときは、どうしても「今日はこのテキストをやる」とか「テストまでにこれだけ復習する」というノルマに追われて、じっくり問題と向き合えなくなりがちです。お母様(お父様)が厳しく勉強を管理している場合はなおさらです。やはり毎回毎回のテキストをじっくり考えながら解くということが何より大切です。『その場で読んで、理解して、持っている知識を使いつつ答える』というのが難しいとのことですが、これも普段から暗記にたよらず、1問ずつに必要な時間と集中力を割いて勉強をしているかが大切になります。算数のベイシックは僕はあまり好きではありません。あれは決まった解法に当てはめるようにできています。繰り返し解けば解くほど、暗記に頼った解き方になります。
「ちゃんと問題に向き合って考えて解く(解けなければ解説見てもいいが本質を理解する)」というのが本当の勉強だとするならば、長時間机に向かっている生徒は実は勉強不足であることが多いです。長時間勉強すればするほど、本能的に頭を疲労させないような勉強法が身に付いてしまいます。基礎トレの解答を写していたというのもこれが原因です。やる気がないのではなく、『怒られず、疲れすぎず、その日のノルマを終える』というお子様の防衛本能の表れだと思います。
まずは適切な勉強量であることが大切です。そしてそれを適切な時間をかけて解くことです。長すぎても短すぎてもいけません。そのバランスは本人が1番分かることなので、本人に任せることが大切です。答えを写していたり、明らかにサボっている場合は指摘しなければいけませんし、もう頭が働いていないのにダラダラ勉強している場合は、さっさと休ませるべきです。
本人にとっての適切な勉強量を超えているのに、ご両親が「もっと勉強しなさい」「あれもやりなさい・これもやりなさい」と必死になった結果、お子様の勉強そのものが完全に行き詰まり、親子関係(夫婦)が破綻する・勉強が大嫌いになる・お子様の精神が病んでしまうという例を多く見てきました。もちろん受験どころではなくなります。これは本人の現在の実力とご両親の期待する偏差値に差があることが原因です。『今はこの偏差値だけど、本当はもっとできるはず』『この学校に行くためにはあと ▭ 偏差値を上げなければならない』『 ▭ ちゃんはαクラスだから』などと考えてはいないでしょうか。
『以前αクラスだったが現在偏差値40代後半』ということであれば、まずは『今の実力は40代後半である』ということを受け入れて、少しでも上がったら褒めてあげてください。「本当はもっとできるよね」とか「αに戻れるように頑張ろうね」などと言う必要はありません。お子様本人が1番そう思っていますし、自分からそのように言うはずです。
具体的に言えば、組分け対策に割く期間が2週間だとすれば、平常授業のテキストもあるので、30時間もすれば良い方でしょう。苦手な教科1つに絞っても良いかもしれません。さらに苦手な範囲を数冊に絞って、サピックスの元のテキストまで戻って、よく読み直して時間をかけてじっくり問題に向き合ってください。たとえその範囲が出題されなくても何の問題もありません。今後どこかで必ず出題されるのですから。「忘れている範囲を総復習しなければ!」と広く浅く勉強しても、結局そのままの問題が出るわけではないので、少しひねられて正解できず、「ここ復習したのに何でできないの!!」と喧嘩になるだけです。
今回お伺いしたお子様の勉強法の中で素晴らしい点もあります。『白地図で忘れていそうな平野や川、新幹線の名前などを自分でやりなおした』という点です。自分で「ここ苦手だな」と感じて、テキストを選んだりまとめたりして、勉強したものは忘れにくいですし、やったのに記憶が定着していなくてテストで間違えれば、悔しくて自分からやり直すでしょう。
また『算数の7⃞の問題を書き出して試行錯誤して答えられた』というのも本当によいことです。3点以上の価値があります。配点が低かったのは偶然であって落ち込む必要はありません。
理科が全く解けなかったとのことですが、理科は4教科の中で1番暗記が通用しない教科だと思います。問題ごとに細かな条件が異なりますし、図や表を分析しなければなりません。普段から考える勉強をしていないと、今後どんどん問題が難しくなっていった時に通用しなくなります。もちろん受験(ある程度以上のレベルの中学校)では知っている問題は全く出ないと考えてください。全てその場で考えなければなりません。そのための訓練が普段の勉強です。SAPIXのテキストの確認問題であれば、大問1つで20~30分かかることもあります。とにかく最後まで終わらせるとか、早く済ませるのではなく、自分で考えて解けるという経験を多く積ませてあげてください。解けなかった問題は本質的に理解できるまで説明してあげることです。