計算が苦手だというご相談はよく受けます。すべてのご相談の中で一番多いかもしれません。それだけ悩んでいる生徒とご両親が多いということであり、また簡単に解決できない問題でもあります。
計算でよく間違える子供に対して、『丁寧に筆算しなさい』『筆算を綺麗に書きなさい』とご両親が口を酸っぱくして指導することがあります。しかしそれで計算が得意になることはまずありません。むしろ逆効果になることが多いです。なぜでしょうか。
- 子供(算数・中学受験)と大人(数学・大学受験の感覚が残っているご両親が多い)の思考は別物であるということ
- 算数は暗記・計算・直感・パズルであり、数学は公式を利用した論理的思考の積み重ねであるということ
- 子供と大人の脳の違い、算数と数学の違いを意識した指導でないと算数は伸びないということ
- 「綺麗に書くこと」が目的になってしまい、問題そのものに向き合えなくなる(クイズのように正解することそのものを目的として楽しむ子の方が算数ができる)
- ヒステリックに日常的に注意されることで、算数に取り組む時に萎縮してしまっている(楽しめない子は伸びない)
ではどうしたらよいのか。端的に言うと2点です。「ガミガミ言わない」「できるだけ筆算しない」です。もちろん放っておけばよいということではありません。
多くの生徒を指導する中で、僕は以下のことに気がつきました。
- 筆算は大人が綺麗に書いてやっても一定確率で間違える欠陥のある方法であるということ(繰り上がりや小数点の位置や掛け算後の足し算など。)
- 暗算の方が間違えにくいと言うこと(子供の思考の基本は暗記であるということ。暗記している数値には間違いがない。一瞬で答えが出るため、問題そのもののを解く流れが断ち切られない。暗算は『およそどのくらいになるか』に意識がいくため、的外れな数値が出た場合に気付きやすい。)
- よく出来る生徒ほど筆算を避けようと工夫すると言うこと
もちろんある程度以上複雑なものは筆算するしかありませんが、筆算を省ける領域を広げれば広げるほど計算が得意になり、算数そのものも得意になります。
筆算をしなくてもよい基準は以下のものになります。筆算を習いたての生徒は筆算の練習を積む必要がありますが、難関校を目指す4年生以上は以下の基準を守ってみてください。
- 1桁×2桁は筆算しない→こちらの記事で練習してください(作成中)
- 2桁×2桁は筆算しても良いが、20×20以下は筆算しない
- 11×11,12×12・・・19×19,20×20までの平方は暗記する→こちらの記事で暗記してください【2桁の平方数を暗記】
- 15×15,25×25・・・85×85,95×95までの平方は暗記する
- 3.14の掛け算は出来るだけ暗記する
- 1桁で割る時は割られる数が何であれ暗算する
- 3桁までの足し算・引き算は筆算しない
上記の教材は、①九九、②3桁までの足し算・引き算、③筆算の基本、④逆算(虫食い算)の基本、⑤分数・小数の基本ができている人向けです。その辺りができない生徒は、公文・そろばんに行くのが一番手取り早いです。あるいは基本のドリルをやりこんで下さい。
ここまでできれば、暗算で出来る領域を独自にさらに広げていけるはずです。塾で教えられる計算の工夫を避けている生徒も取り入れられるようになるはずです。面倒な計算を地道に解いているうちは上達しません。
19×19までの計算の本は流行りましたね。ああいった計算方や3.14の暗記などを必要ないという方もいますが、中学受験ではほんの少しでも楽に計算できる方法は、面倒くさがらずに出来る限り取り入れるべきです。例えば3.14の計算などは何千回も解きますし、それが数秒早くできるようになれば、どれほど勉強が捗り、どれほどテストで有利になるでしょうか。他の計算についても同じです。
ただし最初は必ず計算ミスが増えます。それを3ヶ月我慢してみてください。
以下のような本を買ってもよいですし、工夫できる計算は塾でもインターネットでも紹介されています。1つ1つ取り組んで、取り組むことをお勧めします。計算が上手になると、思考力問題も得意になるものですから、ぜひお試しください。