指導例 サピックス 算数 小4 中学受験

指導例① SAPIX4年αクラス

僕の指導で圧倒的に多いのが、SAPIXに通う生徒のフォローです。今回は大規模校でαクラスの上位に通う生徒(A君)の指導をご紹介します。

難関中学に合格する王道は、SAPIXに入塾してできるだけ高いクラスを維持することです。都内では他の選択肢も多くあり、僕はSAPIX以外の比較的マイナーなエリート養成塾に通う生徒を指導する機会もありますが、総合的にSAPIXを超える塾は現状ありません。これは数字上も明らかですし、様々な塾に通う生徒から話を聞いている僕の実感としても、SAPIXの独り勝ちは当分続きそうです。

SAPIXの良い所は、基礎知識を叩き込む側面と、思考力を育てる側面のバランスが良いことです。下のクラスでは当然基礎知識を暗記することが重視されますし、上のクラスに上がろうと思えば思考力が必要になってきます。

SAPIXの悪い所は、家庭でのフォローが必須であることです。つまりSAPIXとしては、塾にいる時間の勉強だけでトップエリートは育成できないと割り切って、塾で指導する範囲を限定しています。テキストも時間の許す範囲で優先順位を付けて教えて、暗記・理解・演習は家庭で責任を持ってくださいという方針です。小学2,3年生であれば、元々聡明な生徒であればαクラスにいられるかもしれませんが、4~6年生でαを維持するには、ご家庭が生徒の勉強生活をプロデュースし、具体的に分からない問題を教えてあげる必要が出てきます。

特に難しいのは、分からない問題を教えてあげるということです。意外に思われる方も多いようなのですが、中学受験生の親に求められることの一番は、子供が分からない問題に出会った時に、『機嫌よく』『すぐに』『分かりやすく』教えてあげられるということです。分からない問題を解決してあげないまま、子供の勉強を厳しく管理して「勉強しなさい」と言い続けるだけでは、普通の子供は反発します。分からないまま「やれ!」と言われるだけでは、楽しいはずがありません。素直すぎる子供であれば、理解せずに暗記したり、無気力に時間を潰すだけの勉強を覚えてしまいます。

しかし『機嫌よく』『すぐに』『分かりやすく』教えてあげるということは、ほとんどのご両親にとって極めて難しいことです。時間がなかったり、疲れていたり、問題が解けなかったり、小学生特有の解き方が分からなかったり、つい感情的になってしまったりと、よほどの余裕がなければ親子の勉強はうまくいきません。中学生になれば、優秀な生徒は、分からない問題を自己解決できるのですが、小学生にはできません。「分からなければ解説を読みなさい」「辞書を引きなさい」「自分で調べなさい」というだけのご両親も多いですが、それでは成績は下がる一方だと思って間違いありません。SAPIXに限らず、テキストの解説は小学生が自分で読んで理解できるようにはできていないからです。

こうした構造の中で、僕のような家庭教師にアウトソーシングされることになります。おそらくSAPIXに通う生徒の半数、αクラスではほとんどの生徒が家庭教師に何らかの指導を受けていると思います。僕は全ての教科を指導しているので、成績と勉強状況を見て、必要な教科を教えるようにしています。算数に偏っているご両親が多いのですが、中学受験では何よりもバランスが大切です。苦手科目を得意科目で補うという考え方は危険です。

長くなってしまいましたが、今回ご紹介するA君は、算数を中心に4教科を教えています。1回2時間で週2回になります。A君はもともと優秀な生徒でαクラスにいたのですが、大規模校舎のαクラスの下の方から、なかなかα1~3に上がれないでいました。

ご両親に中学受験の経験がない上、αクラスではかなり難しい問題まで解くので、だんだんと上手く教えてあげられなくなってきたとのことでした。真面目な生徒でやる気がある分、分からない問題をそのままにしておくのが嫌で、ご両親と一緒に四苦八苦しながら取り組んでいたのですが、時間がもったいないし、喧嘩にもなってしまうので、ということでご依頼を頂きました。

僕の指導する小学生の生徒は、「どこが分かっていてどこが分かっていないのか」を自分で分かっていない生徒がほとんどです。そのため僕と一緒に問題を解いて、理解不足の部分をはっきりさせた後で、苦手をつぶしていくことになります。しかしA君はできない部分を自分で把握していますし、できない部分をできると言うこともありません。こういう生徒の場合は、本人が教えてほしいといった問題だけに安心して取り組むことができます。

A君には4教科全て、時には英語(A君は英検準2級持ち)を教えることもありますが、基本は苦手な算数の、思考力問題と『受験問題に挑戦』を教えています。これまではちょっと考えてみて、ほとんどは解けず、そのままになっていたのですが、毎週必ず理解できるようになりました。こういった問題は1問やるのに30分かかる上、同じ問題がテストに出るわけではないので、そこまで手をつけない生徒が多いのですが、毎週続けている生徒とは大きな差がつきます。A君は算数が苦手だったのですが、マンスリーなどでも後半の思考力問題に恐れずチャレンジできるようになり、一桁%の問題で正解できることも増えてきました。こうした問題である程度正解できると、前半でケアレスミスがあっても成績を維持することができます。

A君はテレビの影響で東大生に憧れ(と幻想)があるようで、自分も東大に行きたいと密かに考えていたようなのですが、αの下の方で燻っている状態が続いていたために、「自分はそうしたトップクラスの人間ではないのかもしれない」「中学もトップクラスの難関校ではなく少し落とした所が向いているのかも」と言い始めていました。僕は多くの生徒を見てきて、A君はトップを目指してよいと感じたので、それを伝えるようにしています。最近は算数が改善したことで、α3に上がることもでき、自信がついてきたようです。まだまだ成績に波がありますが、A君は勉強が嫌いでなく、できない問題をしっかり質問してその都度解決するという良い循環ができています。中学受験に成功し、さらに憧れている東大に行けるだろうと期待しています。

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