- 小学4~6年生向けの算数教材です。
- 2020年入試ではそれほど多く出題されませんでした(調べた156校中6問)。2019年入試では多く出題されているので、人気のない問題ではなさそうです。
- やり方が定まっており、応用問題が出しにくいため、ほぼ小問集合でしか出題されません。
- SAPIXのテキストでは『和差算』の範囲になります。
- SAPIXのテストでは、4年生~5年前半に多く出題されます。
- 古くは『長椅子の問題』として有名でしたが、2021年入試では長椅子の形では出題されませんでした。(調べた156校中)
- 問題の後ろの[ ]内の数字はSAPIX偏差値です。自分の目指す学校の偏差値までは解けるようになりましょう。
- 『アメを配る問題』としての出題が増えているようです。
- さらに問題を解きたい生徒はこちらに補充問題があります。
【問題】
- クッキーが1箱あたり5個入っています。これを1箱あたり3個ずつに入れなおすと、6箱多くできました。クッキーは全部で何個ありますか。(桜美林2020年)[38]
- クラス全員に鉛筆を配ろうと思います。一人に4本ずつ配ると28本あまり、一人に6本ずつ配ると48本足りません。鉛筆は ▭ 本あります。(公文国際2020年)[43]
- ▭ このみかんを何人かの子どもに1人あたり5こずつ配ると32こあまり、1人あたり7こずつ配ると8こあまります。(SAPIX新5年3月入室・組分けテスト2019)
- 箱の中にみかんが入っていて、これらを子どもたちに配ります。1人5個ずつ配ると14個足りず、1人4個ずつ配ると9個あまります。箱の中にあるみかんは全部で ▭ 個です。(佼成2020年)[30]
- 何人かの子どもにえんぴつを配ります。1人に9本ずつ配ると44本不足し、1人に7本配っても8本不足します。えんぴつは全部で ▭ 本あります。(SAPIX5年4月度マンスリー確認テスト2017年)
- あめを子どもたちに1人あたり3こずつ配ろうとしましたが、6こ足りないことに気づきました。そこで、あめを30こふやして1人あたり4こずつ配ったところ、7こあまりました。あめは、はじめに何こありましたか。(SAPIX新5年1月入室・組分けテスト2020)
- 1人に4個ずつあめを配ったところ74個余ったので、1人に6個ずつ配ったところ14個足りませんでした。あめを配った人数は ▭ 人です。(成城学園2020年)[42]
- 生徒全員にえんぴつを配ります。1人に5本ずつ配るには43本足りないので、1人に3本ずつ配ったところ21本余りました。えんぴつは ▭ 本あります。(SAPIX5年12月度マンスリー確認テスト2018年)
- 何脚かの長いすに ▭ 人の子どもが座ります。1脚に5人ずつ座ると8人が座れません。1脚に7人ずつ座ると、1人も座っていない長いすが2脚でき、それ以外の長いすにはどれも7人ずつ座ります。(SAPIX新6年3月度入室・組分けテスト2019年)
- 生徒が講堂の長いすに座るのに、1脚に4人ずつ座っていくと20人の生徒が座れません。1脚に5人ずつ座っていくと、2人しか座っていない長いすが1脚と誰も座っていない長いすが5脚できます。生徒は何人いますか。(SAPIX5年5月度マンスリー確認テスト2019年)
- 子どもたちにおはじきとビー玉を配ります。おはじきを1人あたり6こずつ配ろうとすると5こあまります。また、ビー玉を1人あたり8こずつ配ろうとすると9こ足りなくなります。はじめに用意したこ数は、ビー玉がおはじきより24こ多いです。はじめに用意したおはじきは何こですか。(SAPIX新5年1月入室・組分けテスト2021年)
- ある小学校の4年生全員が講堂に集まり映画を見ます。講堂の長いすに6人ずつすわると、20人すわることができません。また、8人ずつすわると、長いすがちょうど4きゃくあまります。この小学校の4年生は全部で何人ですか。(SAPIX新5年1月入室・組分けテスト2019年)
- 用意した箱の中にみかんを入れていきます。1つの箱に8個ずつ入れていくと14個のみかんが箱に入りません。また、1つの箱に10個ずつ入れていくと、いくつかの箱にちょうど10個ずつ入れたところですべてのみかんが箱に入り、2つの箱が余りました。みかんは全部で何個ありますか。(SAPIX新6年生3月度入室・組分けテスト2021年)
- 何枚かのクッキーを袋に小分けするのに、1袋に4枚ずつ入れるとクッキーが17枚余ります。1袋に6枚ずつ入れると、6枚入った袋が何袋かでき、クッキーを入れた最後の袋にはクッキーを6枚までは入れられず、クッキーが1枚も入っていない袋が7袋できます。また、クッキーの枚数は3で割り切れます。クッキーの枚数は ▭ 枚です。(品川女子2020年)[39]
- 4年生、5年生、6年生の生徒にアメを配ります。4年生に4こずつ、5年生に6こずつ、6年生に7こずつ配るには、アメは258こ必要です。4年生に4こずつ、5年生に6こずつ、6年生に10こずつ配るには、アメは312こ必要です。4年生に6こずつ、5年生に7こずつ、6年生に8こずつ配るには、アメは318こ必要です。① 6年生は何人いますか。② 4年生は何人いますか。(SAPIX新5年1月入室テスト2018)
- いくつかのりんごがあります。このりんごを、あるクラスの生徒全員に5個ずつ配ると10個余ります。また、このクラスの人数の3倍より5人少ない人数に2個ずつ配ると8個足りません。りんごは何個あるか求めなさい。(東邦大東邦2020年)[55]
【解答】
- 45
- 180
- 92
- 101
- 118
- 45
- 44
- 117
- 63
- 212
- 119
- 176
- 150
- 141
- 18、15
- 150
【解説】
和差算の中でも、このような問題を『差集め算』と呼ぶことがあります。解き方のコツは次の3つです。
ポイント① 中途半端に方程式を使わないこと
ポイント② 2つの場合について、差集め算の図(式)を書く
ポイント③ いれ物(袋・長椅子)に入っている数を同じにする→その分を最後に増減させる
ポイント①について、中学受験特有の解き方を知らないご両親が教えるときに、ついつい方程式で教えがちです。算数の得意な子が中学1年生で習う方程式を一通り理解した上で使うのならばよいのですが、中途半端に(解き方がわからない問題だけに)方程式を使うと、混乱と間違いの元になるのでやめておいた方がよいです。
ポイント②については、以下の解説で、毎回『差集め算の図』を書いていくので、参考にしてください。基本的には問題文に書いてあることを、そのまままとめるだけです。
ポイント③については、かんたんな差集め算では使いません。入試問題で出題されるときには、ほぼ100%必要になる考え方です。これは一言で説明するのはむつかしいので、問題の解説をよく読んで、どういうことなのか理解してください。
(1)
(13)
差集め算の典型的な問題です。大人がこの問題を生徒に教えるときには、方程式を使わないようにしてください。
まずは上の画像のように、問題文をまとめて、①と②を書きましょう。①と②の両方が『みかんの数』を表していることを理解することが大切です。こうした問題が苦手な生徒は、大体ここでつまずいています。ここを理解していれば、問題文の『14個のみかんが入りません』という表現が、『+』なのか『−』かで迷うことはないはずです。箱に8個ずつ入れた上に、14個が外に出ているということなので、みかんの数を式に表すのであれば、『+14』になりますね。
次に②を③に書きかえる必要があります。②の式は途中までが『+10』ですが、箱の中の最後が『+0+0』となっているので、このままでは不便なんですね。そのときに2箱分を『+10』にそろえる代わりに、最後に『-20』します。これで②と③は合計で同じ数を表すことになります。
つまり、①②③は全部同じ数を表しているんです。そしてその同じ数というのは『みかんの数』です。これで準備は終わりです。
①と③を比べます。②はもう使いません。①は最後が『+14』、③は最後が『-20』なので、34個の差ですね。6の差ではないですよ。『14個もらう』のと『20個取られる』では、34個の差になることを理解してください。そして1箱に入っている数を比べると、①は8個、②は10個なので、1箱あたりで2個の差です。
つまり③は①よりも1箱あたり2個ずつ多いかわりに、最後に34個少ないんです。合計では①と③は同じ数だったので、
34÷2=17
より、箱は17個ですね。
箱の数が分かれば、①②③のどれかを利用して、みかんの数を求めることができます。③は1箱10個ですし、最後まで10個なので、計算が楽ですね。②は箱が2つあまっていますが、最後の+−がないので、こちらも計算が楽です。③を使うと
17箱×10個-20個=150個
答えは150個です。
(14)
問題文をよく読んで、①と②を書きます。①と②の両方が『クッキーの数』を表していることを理解することが大切です。
①では、一袋に4個ずつ入れた上に、17個が外に出ているということなので、クッキーの数を式に表すのであれば、『−17』ではなく、『+17』になりますね。
②はちょっとむつかしいです。『クッキーを入れた最後の袋にはクッキーを6枚までは入れられず』とありますので、その袋には1枚〜5枚入れたことになります。そこを ▭ としておきます。そしてそのあとの7袋には1枚も入っていないのですから、『+0』を7回書いています。
①と②は問題文をそのまま図(式)にしたものです。
次に、①はそのままでよいのですが、②はきれいな式でないですね。 ▭ があったり、0枚があるので、全部6枚にそろえたいんです。ですから、③のように書きかえます。その時に注意するのは、これはクッキーの数をあらわした式なのですから、『増やした分はあとで引いておかないといけない』ということです。
▭ の所は、はっきりはわかりませんが、1枚から5枚のクッキーが入っていたのですから、それを6枚にするためには、1〜5枚足さなければなりませんね。元が1枚なら5枚足す、元が2枚なら4枚足す、元が3枚なら3枚足す、元が4枚なら2枚足す、元が5枚なら1枚足す、ということです。
また、0枚だった7袋には6枚ずつクッキーを入れるので、42枚足したことになります。つまり、合わせて43枚〜47枚のクッキーを袋に入れたことにするのですから、その分あとで引いておかないといけません。①②③の式は全部クッキーの枚数をあらわしているからです。ただ足すだけだと、クッキーの枚数が増えてしまいますね。
③の式ができたら、①と③の式を比べて解いていきます。②の式はもう使いません。
①の式と③の式の最後が、『+17』と『-43〜-47』なので、差が60〜64のどれかになります。一袋に入っているクッキーの差は2枚ですから、60〜64を2で割ると、袋の枚数が出ます。③は一袋につき2枚多い代わりに、最後が60〜64少ないということです。
60〜64枚というのがハッキリしていないので、むつかしく感じるかもしれませんが、全部やってみればかんたんです。
60枚だとしてみましょう。60÷2=30なので30袋になります。61÷2=30.5はおかしいです。袋の数は整数でないといけませんね。62÷2=31、63÷2=31.5、64÷2=32より、袋の数は30か31か32だとわかります。
袋の数もハッキリしていませんが、これも全部ためしてみればいいんです。
30袋だとすると、①の式から30×4+17=137なので、クッキーの数は137枚になります。ですがこれは3で割り切れません。答えではないということですね。
31袋だとすると、クッキーの数は141枚になります。これは『各位の数の和が3の倍数になっている』ので、3の倍数だとわかります。ですから答えは141枚です。
一応、32袋の場合も確認しておかないといけません。32×4+17=145なので、クッキーの数は145枚と出ますが、これは3で割り切れないので、答えではありません。
(15)
問題文を読むと、258個・312個・318個の3つの場合について説明されていることがわかります。
最初に258個と312個の場合をまとめます。これをアとイとします。この2つの場合は、4年生と5年生に配るアメの数が同じなので、比べやすいですね。3つ目の318個の場合は①では使いません。
4年生と5年生の人数はまだわかりませんが、4年生と5年生に配ったアメの合計が、アの場合もイの場合も、同じ数になることはわかります。ですから、258個と312個の差は、6年生だけでついた差なんですね。6年生は1人につき3個差、全体で54個差なので、6年生は18人いることがわかります。ですから①の答えは18人です。
6年生の人数が決まったので、イの場合に6年生に配ったアメが180個だとわかります。そうすると4年生と5年生に配った数は132個になります。これはアの式に入れて計算しても同じことになります。
次にまだ使っていなかった、問題文の318個の場合を考えます。6年生は18人で8個ずつ配ったのですから、6年生に配った数は144個になります。ということは、4年生と5年生に配った数は174個ですね。
イで作った式とウで作った式を並べてみても、差集め算のやり方で解くことが難しそうなので、消去算をします。4年生の人数を『まる1』、5年生の人数を『しかく1』とすると、上の画像のような式が2つできるので、あとは丸か四角の数をそろえて、消去算をするだけです。
消去算の説明はここではしません。消去算をまだ習ってない生徒には解くのが難しいので、後回しにしてかまいません。
(16)
東邦大東邦(2022年のSAPIX偏差値55)だけになかなかの難問です。この問題は6年生だけ、しかも難関校を目指す生徒だけが解けばよいです。
方程式を知っていれば解けますし、クラスの人数を『丸1』りんごの数を『四角1』などと置いて、方程式と同じことをすれば解けますが、ここではあくまで差集め算の問題として扱います。『無理矢理にでも2つの場合をそろえていく感覚』を養う、よい練習になりますよ。
差集め算というのは、2つの場合をそろえないと解けません。この問題では、2つ目の場合の人数が『3倍より5人少ない』ということなので、まずはそちらに人数を合わせるために、1つ目の場合の人数を3倍にしてみます。1つ目の場合をア、2つ目の場合をイとします。
このようにまずは問題文の通りにアの式を書き、それを3倍します。その時、あまっているりんごの数(10個)も3倍しなければならないことに、気を付けてください。次にイの式を問題文の通りに書きます。
イの場合は『アの場合の3倍よりも5人少ない』ということなので、3倍の人数の最後の5人は0個だったということにします。
この時、ずっと2個ずつ配って、最後の5人だけ0個だと計算しにくいので、全員に2個ずつ配ったことにしてしまいます。もともと8個足りなかった所に、5×2で10個余分に配ったのですから、18個足りなくなりますね。
さらにアの時に作った式(ア×3の所)は、りんごの数の3倍を表す式だったので、それに合わせるために、イの式も3倍します。3倍するといっても、アの時のように、人数を3倍するのではなく、一人一人に配るりんごの数を3倍にします。この場合も全体を3倍するために、最後の『足りない18個』も3倍して、『54個足りなくなる』ように-54と式に表してください。
やっと準備が終わりました。これまでに作った『ア×3』の式と『イ×3』の式を並べて書いてみましょう。
ここまでついてこれた生徒なら、もう簡単ですね。2つの式を比べてみると、一人当たりに配る数は1個差で、全体としては最後に84個の差がついています。そしてどちらも『りんごの数の3倍』という同じ数を表した式です。
84÷1=84で、クラスの人数の3倍が84人と分かります。
84÷3=28で、クラスの人数が28人と分かります。
クラスの人数が分かれば、あとは最初のアの式に入れるだけでりんごの数が求められます。
28×5+10=150で、150人がりんごの数、つまりこの問題の答えになります。