志望校はいつ決めればよいのか(中学受験)

受験の世界では2月が学年の切り替え月です。新6年生とそのご両親は、身が引き締まる想いになっているでしょう。何しろ、受験まであと1年しかないのですから。

この時期に受ける質問として「志望校はいつ決めればいいのですか」というものがあります。ご両親が1年の予定を立てるにあたって、志望校をある程度定めていないと動けないという事情があります。塾によっては特定の学校を目指す講座が始まりますし、家庭教師を依頼するにしても志望校によって事情が変わってくるでしょう。

基本的には人それぞれ

多くの生徒はもっと成績を伸ばして、今の偏差値よりも上の学校を志望校にしたいと思っているでしょう。春の段階ではその気持ちを持っていて良いと思います。夏までの成績を見て決めれば良いと思います。

本格的に受験勉強を始めるのが遅かった子は、急激に伸びる可能性があるので、10月くらいまではかなり上の目標を持っていてもいいでしょう。無謀な受験にならないように、ご両親が客観的に子供の伸びしろを測る必要があります。

長く塾にいて、ご両親がべったり付いて勉強に取り組んできた生徒は既に力を伸ばし切っており、それほど伸びることは考えづらいので、夏前までに大体の目処(めど)を立ててもよいでしょう。

夏休み中には決定するのがよい

夏休み明けには、各塾の志望校別対策が本格化しますので、夏休み中には志望校を決定する必要があります。夏を過ぎても志望校がコロコロ変わる生徒は、受験に失敗する確率が高いです。志望校別特訓や、過去問対策などが無駄になるので、当然だと思います。

現実的な志望校選び

ではどうやって志望校を決めるのか。春の段階では目標を高く持っていてよいと上に書きましたが、実際に受験する学校を絞り込む際には現実的にならねばなりません。

もちろん、受験直前に急激に偏差値が伸びる子もいますし、伸びる子がいるということは落ちる子もいるということです。その子の素質や余力を見極めて、志望校を高めに設定してもよいのか、無難にまとめていくのかを判断しなければなりません。それは基本的には、ご両親にしかできないことです。塾も家庭教師も、生徒やご両親の志望校があれば、それを応援する立場ですし、「そこは無理ですよ」ということはできません。

チャレンジ校は偏差値が5上の学校まで

一般論として、6年生に上がって(5年生の2月)から、夏(6年生の8月)までの成績の平均偏差値を見て、5ポイント上までをチャレンジ校とするのがいいでしょう。それ以上は基本的に難しいです。

もちろん絶対無理と言うわけではないです。実際僕の生徒でも10ポイント以上偏差値が上の学校に受かる生徒もいます。ですが、それは例外的なことと考えるべきです。

塾の発表する偏差値表というのは、前年度の各学校の合格者・不合格者を分析して、大体どのくらいの成績の人ならば受かるかを表したもので、かなり信頼のおけるものです。それを覆すのは奇跡的なことだと理解して下さい。

チャレンジ校は『本命校』と考えないようにする

チャレンジ校はあくまでチャレンジです。しかし第一志望として、それに向けて勉強していると、不思議なことに『受かって当然』という気になってくるものです。ですが現実は甘くありません。そもそもどの学校でも倍率は3倍以上ですし、実力より上の学校なのですから、不合格の可能性の方がずっと高いわけです。

ですから『本命校は適正校』と考えるのがよいと思っています。偏差値的に1~2ポイント上までは適正校と言って良いと思います。

どうしても行きたい学校(行かせたい学校)があるのであれば、6年の夏までに、その学校が適正校といえるような偏差値に持っていくことです。明らかに実力以上の学校を『絶対に受からねばならない学校』『受かって当然の学校』と設定することは、受験生活にも、受験後(不合格後)にも、歪みを生み出します。

一番良かった成績が実力ではない

生徒にありがちなのですが(ご両親にも稀にあるのですが)、これまでに取ったことのある一番良い成績を、『本当の実力』だと思い込んでしまうことです。もちろんそんなことはありません。現時点から5、6回分前までのテストの平均を実力と考えるべきです。

直前にも伸びる子の特徴

そうは言っても、今の成績より上の学校に合格したいというのが、誰しも持つ希望だと思います。ではどういう子ならば、受験が差し迫った時期でも成績を伸ばし、塾の偏差値より上の学校に受かることができるのか。

  • 地頭の良い子・・・身もふたもない言い方になってしまいますが、現実的には生まれ持ったものもあります。
  • 効率の良い子・・・テキパキやることをこなしていける子です。作業が早い子。ダラダラしない子です。見ていて明らかに「集中力がないな」という子は直前に伸びにくいでしょう。
  • 精神年齢の高い子・・・国語の読解問題はもちろん、他教科でも思考を積み重ねていく問題では、精神年齢の高い子が圧倒的に有利です。
  • 自分からやる子・・・言われたことしかやらない子は伸びません。当たり前ですね。自分で課題を見つけて、自分から机に向かう子です。5年生では自分から勉強する子は少ないでしょうが、6年生になると自覚が出てきて、自分でやるようになります。言い換えれば、6年生になってもご両親がガミガミ言ってやらせることが日常になっているご家庭は要注意です。
  • 塾に通っている期間・家庭教師のついている期間が短い子・・・伸び代がある子です。

バランスよく受験校を配置する

どの程度伸びるかは生徒それぞれで、ご両親が判断するしかないと書きました。いずれにしても、夏の段階でそれまで数回の偏差値の平均を見て、適正校を受験の基礎に据えることです。適正校を2回は受けて下さい。2回以上受けられる学校であれば、同じ学校を受験するのがいいでしょう。そして適正校を『本命』『第一志望』と考えるのがよいと思います。

チャレンジ校は基本1回まで。適正校(本命)に合格した後であれば、何度チャレンジ校を受けても構いません。

1月にいわゆる『おさえの学校(すべり止め)』の合格をもらっておく。絶対に通うつもりのない学校は『おさえの学校』とは呼べません。そこしか受からなかった場合はそこに通うんだと、予め話し合って決めておいてください。受験の結果が出た後に、バタバタしたり、精神的に不安定にならないように、予め家族で話し合って納得しておくことが大切です。

子供の可能性は計り知れない

以上、現実的にまっとうな受験計画を立てることをお勧めしてきました。しかし長く受験指導をしていると、「(口には出しませんが)絶対無理だろうな」と思っていても、合格をもらってくる子がいます。大学受験に比べ、中学受験は本番のブレが大きく、直前の成長も急激なものがあります。どうしても行きたい学校があれば、諦めないのも手です。無謀とチャレンジは紙一重で、全ては結果次第とも言えます。

いずれにせよ、実力より上の学校ばかり受けるのはよくないことです。実際にかなりの数の生徒(とご両親)がそうした無謀な受験をしています。ご両親はそうした受験にストップをかけねばならないはずなのですが、プライドが邪魔をしているようです。

全て不合格では生徒が可哀想ですし、大騒ぎの末に最終的にどこかの学校に滑り込んだとしても、その後の勉強生活に悪影響を与えます。勉強はあくまでもコツコツ長い時間をかけて、基本的な内容を1つ1つおさえていくべきものです。特効薬やタイムセールや抜け道などは存在しないんです(そうしたことを標榜する受験ビジネスが存在することは大きな問題です・・・)。

実力以上の学校ばかり受けること自体が、地道な勉強を否定することになります。入学後にで進学・進級が危ぶまれるのは、こうした無謀な受験を経験し、勉強の本質を見誤ってしまった子です。

まとめ

少し厳し目のことも書きましたが、基本は生徒の様子や性格や素質をよく見て、真っ当に判断して欲しいということです。無謀な受験にならないように。時期はおおよそ夏頃。夏休み中にひとまず大筋を確定して良いと思います。受験校の微調整は直前まで行う必要があります。

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ryuju