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中学生にお勧めする本です。
家庭教師として、生徒の生の反応と本音が聞ける立場なので、『生徒の食いつきが良い本』『本が好きになるための本』『内容がまっとうな本』を紹介していこうと思います。
『退出ゲーム』(初野晴)
評価 ★★★★★(82/100)
中学1年生から・読みやすい本・ミステリー
難易度 ★★☆☆☆(平易)
長所『読書初心者に』『読みやすい』『中学生が食いつきやすい要素多数』『クオリティがある』
短所『いわゆる古典的な名著ではない』
本を読まない生徒にお勧め
とにかく本を読まない生徒に本好きになってもらいたい。難関大学を目指す生徒の親の普遍的な悩みだと思います。先生からお勧めの本を教えてもらいたいとご依頼を受けます。
子供は、あるいは大人も、自分のレベルに合っているものしか読みません。『無理に読ませない』『自分で選ばせる』『合わなかったら投げ出してオーケー』『気が向いた時にすぐに本を手に取れる環境にする』ことが大切です。
今回は小学生の頃は本をある程度読んだのに、中学生になってからスマホばかりという生徒向けに探した本です。生徒に読んでもらった時の反応(あるいは読まずに投げ出すのか)も、後ほどシェアします。
中学生を引きつける要素が満載
『退出ゲーム』は中学生を引きつける要素が満載です。
最初から神話(アマテラス)を絡めてきます。神(神話)は中学生を最も引きつける要素の一つです。また『軽い恋愛風味』『学校が舞台』『廃部寸前の吹奏楽部』など、あざといくらいに中学生向けです。
またこれはミステリー風味の本です。ただしいわゆる探偵物のように殺人事件を解決するタイプではありません。こうしたミステリー要素は読者を最後まで引っ張っていく上で重要だと思います。江戸川乱歩などが、今でも小学生男子の心を引きつけるようですが、そうした生徒が中学生になって読んでみるのに適している思います。
文庫本のカバーが綺麗で中高生好みだと思います。ラノベではないので、中には挿絵がありません。
読みやすい
文庫本で一話50ページ程度のオムニバス形式なので、飽きずに読みやすいと思います。収録されている4話を通じて舞台設定も登場人物も共通なので、気に入れば長編小説のように長く楽しむこともできます。
文章はラノベといわゆる名著の間くらいの軽さなので、読みやすい上に親や教員としても安心できる感じです。
僕自身ラノベの軽薄な文章が耐えられず(全てではないでしょうが少なくとも僕が中学生に勧められて読んだものは酷いものでした)、またラノベ以外でも同程度のクオリティの文章が蔓延しているのが耐えられないのですが、この初野晴さんは大丈夫です。軽めのタッチですが、知性とセンスと、なんとも言えない爽やかなこなれ感があります。
女の子にもお勧め
作者の初野晴さんは男性ですが、女性が書く学園小説のような雰囲気があります。ミステリーということもあり、はやみねかおるを読んでいたような女の子が少しステップアップするのにいいと思います。
読書好きになる導入として
かなり読みやすい部類に入ります。まずは面白いと思って読み通してもらうことが大切です。ですが親が無理強いしてはいけません。気に入れば同じ登場人物のシリーズものも出ていますので、そちらも読み、似たようなカテゴリーの本を自分で探すようになると最高ですね。
実際の反応
普段全く本を読まない子に「1話だけでよいから読んでごらん」と言って勧めました。一週間後にどういう話だったか、どう感じたかを話すことを宿題としました。読んだふりをしないためです。家庭教師は1対1ですし、自分も読んでいるので、生徒が読んだか・読んだふりをしているかすぐ分かります。
結果、なかなか面白かったとの反応でした。やはり取っ付きやすい内容だったようです。ただし謎解きの部分や、散りばめられている知識などは少し難しいようで、わからない部分もあったようです。「本っていうのは全部分からなくていいんだよ」と伝えました。僕も10年ぶりにトルストイを読み直しましたが、新しい発見だらけでした。