国語 小5 読書 本紹介

小学5年生にお勧めの本(中学受験)

  • 読書が大切と分かっていても、何を読めば(読ませれば)よいか分からない生徒(ご両親)の参考になればよいと思い、まとめました。
  • 啓発本や芸能人の書いた本の類は百害あって一理なしです。
  • 漫画も語彙を増やしたり、熱中できるという意味では悪くないですが、やはり本がよいでしょう。
  • 本は買ったからといって必ず読み通さねばならないわけではありません。良い本を本棚に並べておくだけでもよいです。
  • 随時追加していきます。

 

目次

1.  説明文

2.  物語文

 

1.  説明文

日高敏隆『ぼくの世界博物誌』

  • 難易度:★★☆☆☆(2/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★☆☆(3/5)
  • 女子向けオススメ度:★★☆☆☆(2/5)
  • 出題元:SAPIXの5年生の国語テキスト
  • 動物学者である筆者が、平易な文章で動物や環境について説明します。
  • この筆者の文章は入試問題にもよく出題されます。日高敏隆さんの本
  • 小学5年生の初期にぴったり、題材も動物なのでとっつきやすい。
  • 『「人間は動物とどこがちがいますか?」動物学をやっているせいか、ぼくは、しばしばこう聞かれる。人間というのは、なぜかすごく偉いことになっている。ぼくらは暗黙のうちに「人間は動物とはちがう」と思っているのだろう。たしかに人間と他の動物はちがう。でも、それはネコがほかの動物とちがうのと同じことだ。ネコがイヌとちがうからといって、ネコがイヌより偉いことにはならない。』

 

日高敏隆『ネズミが地球を征服する?』

  • 難易度:★★☆☆☆(2/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★☆☆(3/5)
  • 女子向けオススメ度:★★☆☆☆(2/5)
  • 出題元:SAPIXの5年生の国語テキスト
  • 小学5年生の初期にぴったり、題材も動物なのでとっつきやすい。
  • この筆者の文章は入試問題にもよく出題されます。日高敏隆さんの本
  • 『今から四十年近く前、オーストリア生まれの著名な動物行動学者であるローレンツはオオカミの争いを観察してびっくりした。ウサギやハトでもものすごい闘いをするのだから、猛獣の中の猛獣、そしてヨーロッパ人の考えかたの中では、もっとも悪いけものであるオオカミの闘いは、残忍きわまるものと思われていた。だが、じっさいによく見てみたら、話はまったくちがっていたのである。』

 

三上修『スズメの謎 身近な野鳥が減っている!?』

  • 難易度:★★★☆☆(3/5)
  • 男子向けオススメ度:★★☆☆☆(2/5)
  • 女子向けオススメ度:★★☆☆☆(2/5)
  • 出題元:SAPIXの5年生の国語テキスト
  • 都市に住む鳥類に詳しい筆者。小5にちょうど良い難易度です。
  • 『現在、スズメが減少しています。そして、まだ減り続けると考えられます。では、それを知った私たちはどうすればよいでしょうか。これは、私がずっと考えながらも、いまだ答えが出ていない問題です。なぜ答えが出ないかというと、立場の違いによって、異なる意見が出てくるからです。』

 

石渡正志・宮内主斗編著『役立つ理科こばなし②』

  • 難易度:★★★☆☆(3/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★★☆(4/5)
  • 女子向けオススメ度:★★★★☆(4/5)
  • 出題元:SAPIXの5年生の国語テキスト
  • 様々な筆者の文章をまとめたものです。「変な〜図鑑」シリーズのような表面的な面白さを追求したものよりも、しっかりとした内容です。
  • 動物・植物・地学・化学・天文学など大人が読んでも面白い内容です。おすすめです。
  • シリーズ化されています。理科のこばなしシリーズ。気に入ったらたくさん読んでみましょう。
  • 『豊岡(兵庫県豊岡市)の人たちは減っていくコウノトリを見て、何とか救おうと1965年から人工飼育を始めた。(中略)懸命の努力が続いたが、最初の24年間、卵は産まれても1羽のヒナもかえらなかった。ソ連から贈られた幼鳥が成鳥になり、彼らのペアから1989年に最初のヒナがかえった。その後は順調に増えて、2005年には約120羽になった。(中略)豊岡の人たちは、「コウノトリのためにすることは人のためにもなる。コウノトリがすむことのできる豊かな自然環境をとりもどすことは、子孫に贈り物をすることになる」という。これはどういうことなのだろうか?』

 

加藤秀俊『続 暮しの思想』

 
  • 難易度:★★★☆☆(3/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★☆☆(3/5)
  • 女子向けオススメ度:★★★★☆(4/5)
  • 出題元:SAPIXの5年生の国語テキスト
  • 90歳になる立派な社会学者が40年以上前に書いた文章です。現代社会の歪んだ点を指摘するのですが、文章は分かりやすく、現代の子供にも納得できる内容です。
  • 『東京や大阪おおささの満員電車にのったときのことを思い出してみよう。そこでは人間どうしが、物理的にぎゅうぎゅうにしこめられ、顔と顔とが、ほとんどくっつきあってしまっている。しかし、そんなにくっつきあっていても、けっして、その状態は「人間・人間系」の関係にはならない。その人間たちは、駅で無言のまま列をつくって自動販売機でキップを買い、パチンコ屋で機械相手に束の間のレジャーをたのしみ、そして自動酒場で酒をのんでいる。機械相手の生活を余儀なくさせられているのは、人間が足りないからだ、というのは事実だけれど、じつのところ、社会は人間に満ちあふれているのである。なんだか、これはおかしなことではないのか。』

 

植原彰『ぼくらの自然観察会』

  • 難易度:★★☆☆☆(2/5)
  • 男子向けオススメ度:★★☆☆☆(2/5)
  • 女子向けオススメ度:★★★☆☆(3/5)
  • 出題元:SAPIXの5年生の国語テキスト
  • 自然保護のために活動する筆者が、自然観察会の意義を分かりやすく説明した文章。
  • 読みやすく、優しい語り口の文章。
  • 『自然の「つながり」を見ることを重視する』、『自然観察会は自然保護活動の一つである』、『開発と自然保護の二者択一で考えない』など、自然保護とは何かを考え直すきっかけとなる本。
  • 『たとえば、ぼくはある営林署の方からこんな話を聞いたことがある。「最近、困ったことが起こったんです。それは、私たちが管理しているキャンプ場の中の枯れ木なんです。大きな太い枯れ木で、いつ倒れるか、わからないのです。キツツキは来るし、カミキリムシの穴はたくさんあいているし、キノコは生えているしと、自然の仕組みを勉強するにはすごくいい教材だとは思うのですが、倒れたときの危険性を考えると切らないわけにはいきません。それで結局、安全面を優先させて、その枯れ木を切ってしまいました。自然保護のむずかしさが身にしみましたよ」ぼくはこの話を聞いて、なぜ、切るか切らないかという二者択一の問題にしてしまったのか、残念でならなかった。』

 

田中淳夫『日本の森はなぜ危機なのか』

  • 難易度:★★★★☆(4/5)
  • 男子向けオススメ度:★★☆☆☆(2/5)
  • 女子向けオススメ度:★★☆☆☆(2/5)
  • 出題元:SAPIXの5年生の国語テキスト
  • 『森林ジャーナリスト』である筆者は、森林を通して社会の問題を眺める。
  • インターネット上にも積極的に文章を発表している→筆者のまとめページ
  • ネット記事を多く書いている筆者らしく、少し固めで大人向けの文章。
  • 『よく「森林危機」とか「山が荒れている」という言葉を耳にする。だが一般の人びとは、その中身を十分に知っているだろうか。危機の中身は、単純ではない。じつは二通りの森林の危機があるのである。』

 

佐藤洋一郎『食を考える』

  • 難易度:★★★☆☆(3/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★☆☆(3/5)
  • 女子向けオススメ度:★★★☆☆(3/5)
  • 出題元:SAPIXの5年生の国語テキスト
  • 『食』は受験にも頻出のテーマです。
  • 農業が専門の筆者が、様々な切り口から、食に関して問題を提起します。
  • 『ある小学校の先生から今の子は魚が切り身のまま泳いでいると思っている、という話を聞いた。話には聞いていたが、現場の先生からそう聞かされるとやはり新鮮な驚きを覚える。その昔、「四本足の鶏」という話がまことしやかに語られたことがあった。学校の生徒の中に、鶏が四本の足を持っていると思っている子どもたちがいるというのである。まさかこれは嘘だろうと思っていたが、あるとき、ある大学の授業で、試しに鶏の絵を描かせて見たら本当に四本足が出てきて驚いたことがある。』

 

伊東光晴『君たちの生きる社会』

  • 難易度:★★★★☆(4/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★★☆(4/5)
  • 女子向けオススメ度:★★★★☆(4/5)
  • 出題元:SAPIXの5年生の国語テキスト
  • 社会通念に囚われず、複眼的な見方を持ち、自分で考えねばならないとの主張が一貫しています。
  • 子供の世界観から抜け出し、知的な物の見方を求められるようになる小5〜小6にぴったりの内容です。
  • 内容は比較的高度ですが、語り口は丁寧で、子供に分かりやすく説明してくれています。
  • 『ノーベル賞のノーベルといえば偉い人だとふつうは考えられているでしょう。たしかに発明したという点では偉い人にはちがいないのです。だが少し見方をかえると、ノーベルは独占という反社会的なことをおこなった人で、偉いどころか、問題の人なのです。社会のことを考えるときには、こうした、いくつもの見方が一人の人についてもできるし、する必要がある—これがたいせつなことのひとつです。ともすると私たちは通念にわざわいされて、その背後にあるほんとうのことを見失いがちです。これを見失ってはならない—これが、私たちの生きる社会を考えねばならない理由です。』

 

榊原英資『君たちは何のために学ぶのか』

  • 難易度:★★★★☆(4/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★☆☆(3/5)
  • 女子向けオススメ度:★★★☆☆(3/5)
  • 出題元:SAPIXの5年生の国語テキスト
  • 筆者について:元官僚の経済学者です。
  • この本について:筆者の経歴から分かるように、基本的に経済の側面から話を進めますが、子供に分かりやすくしかも『売れるように』書かれてる本なので、読みやすいはずです。少し難しい概念が分かり始めた小5の夏以降におすすめ。昭和の一般的な知識人の考え方がアップデートされずに書かれています。
  • 『欧米の文化を翻訳して採り入れようとする際に起きた問題は、日本語の側に対応する言葉が存在しないということでした。英語やフランス語の言葉の概念と、日本語がそれまで持っていた概念は違うわけです。ですから、欧米の文化を入れたとき、当てはまる言葉がないわけです。たとえば「経済」という言葉は江戸時代まではありませんでした。「経世済民」という言葉はあったけれども、経済という言葉はなかった。しかし英語で言うEconomyに相当する言葉が日本語になかったため、必要に応じて新しい言葉をつくったわけです。』

 

池上彰『日本語の「大疑問」』

  • 難易度:★★★★☆(4/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★★☆(4/5)
  • 女子向けオススメ度:★★★★☆(4/5)
  • 出題元:SAPIXの5年生の国語テキスト
  • 筆者について:説明がいらないほどの有名人。テレビでよく見かけるので、子供でも親しみをもって読めるでしょう。子供にとっては、筆者の顔を知っていると言うのは重要です。
  • この本について:もちろん『分かりやすい』が池上さんのこだわりですから、分かりやすく書かれているのですが、分かりやすくするために『分かりやすい内容だけに絞る』というズルをしていません。そのために小学5年生にとっては、それなりに難しい内容が含まれています。ですが言葉の問題は入試に頻出で、池上さんの文章も入試に頻出なので、読んでおいて損はないです。
  • 『ヨーロッパのさまざまな言葉のもとになったラテン語は、乱れることがありません。「死んだ言葉」だからです 。 誰も日常生活で使っていないので、乱れることもなければ、変化することもありません。ヨーロッパの人の教養として学ばれるだけなのです。国語学者の金田一春彦さんのお父さんの金田一京助さんは、日本語の動詞の活用の形が、平安時代には九種類にも分かれていたものが、次第に整理されてきたことに触れて、「この流動の進みこそ、個人を超越した大きな動きで、いかなる天才もかつて夢想だにしなかった雑多を整理する統一の作業を完成しつつあるのには、何人も驚 嗅を禁じ得ない」と賛辞を贈っています。』
 
 

2.  物語文

21世紀版少年少女世界文学館セット、21世紀版少年少女世界文学館セット

  • 難易度:★★★☆☆(3/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★★★(5/5)
  • 女子向けオススメ度:★★★★★(5/5)
  • 読書好きのための、あるいは読書好きを作るための定番全集だと思います。これを置いているご家庭は多いです。お誕生日プレゼントとしても良いと思います。
  • 世界文学の方から入った方がよいと思います。
  • 文句なしのおすすめです。

 

阿部夏丸『見えない敵』

  • 難易度:★★★☆☆(3/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★★★(5/5)
  • 女子向けオススメ度:★★★☆☆(3/5)
  • 出題元:開成中の入試、SAPIXの5年生の国語テキスト
  • 開成にも出題されたことがある、中学入試で頻出の作家です。阿部夏丸さんの本
  • 秘密基地を作り、川で魚を取り、喧嘩をし、人間関係に悩みながら、成長していく少年の物語。昭和の田舎の男の子の姿が描写されています。
  • 子供向けの物語は安っぽいパターンにはまりがちですが、阿部夏丸さんの描写は爽やかかつ鮮やかで、深みもあります。おすすめです。
  • 『「ねえ、決闘に行くの止めない?弱虫っていわれてもいいよ。決闘なんてしたくないんだ。ケンちゃんが止めるんなら僕も止めるよ」(なんて奴なんだ。僕がずっと思っていながら口にできなかったことを・・・)これは、一つの反乱であった。今まで誰も逆らうことのできなかったアキラとマサアキに、二人で逆らおうというのだ。』

 

J.K.ローリング『ハリーポッター』

  • 難易度:★★★★☆(4/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★★☆(4/5)
  • 女子向けオススメ度:★★★★★(5/5)
  • いわずもがな、大ヒット児童小説です。
  • 家庭教師という職業柄、多くの子供の部屋を見ますが、国語の好きな女の子の部屋にはほぼ間違いなくハリーポッターが揃っています。男の子でもハリーポッターにハマる子は、落ち着いた、知的な子が多いイメージです。
  • おすすめです。
  • 様々な装丁で発売されていますが、あまり本を読まない子は上記のイラスト付きから読み始めてはいかがでしょうか。一般的には普通のハードカバー、本好きな子は文庫版でも良いかもしれません。ハリーポッターシリーズはこちら。

 

椎名誠『岳物語』

  • 難易度:★★☆☆☆(2/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★★★(5/5)
  • 女子向けオススメ度:★★★☆☆(3/5)
  • 出題元:SAPIXの5年生の国語テキスト
  • 作者について:冒険家・小説家として有名な人で、以前はテレビの冒険番組などにも出演していました。少し前の(英語でいうところの)マッチョな世界観を持った冒険家でありながら、子供思いのイクメン、繊細で味わいのある文章を書く小説家という側面もあります。
  • 国語が苦手な僕の生徒にこの本を勧めて、毎日親子で読むうちに本が好きになったという実績があります。本を読む習慣がない生徒は、試してみてください。非常にお勧めです。
  • この作品について:物語文(小説=作り話)でありながら、基本的には作者とその息子の本当の体験を描いています。勉強よりも体力・体験・冒険を重視する父と息子の交流を描きます。息子はどんどん成長し、父はそれを暖かく見守ります。
  • 引用:『私の息子の名前は岳という。両親ともに山登りが好きだったので、山岳の岳というのを名前にしたんだよ、と本人にはじめておしえてやったのは保育園に通っている頃であった。「ふーん、そうかあ」と、息子はたいして面白くもなさそうな顔ですこしだけうなずいてみせた。家の近所に、ある日保育園の息子と同じクラスにいる友達の一家が近くの町から越してきた。吉川健二郎というなんだか古めかしい名前の坊主頭のチビ助で、保育園から帰ってくると一歳年上の小学一年生のお兄ちゃんと毎日のように私の家に遊びにくるようになった。健二郎のお兄ちゃんは昇という名前だった。昇、健二郎兄弟の家は数年前に離婚したらしく母親と三人暮らしだった。「ぼくのおとうさんは地獄におちて死んでしまったんだ」ある日この三人に梨をむいてやっていると、一年生の昇君が突然おこったような顔をしてそんなことを言った。』

 

ビートたけし『少年』

  • 難易度:★★★★☆(4/5)
  • 男子向けオススメ度:★★☆☆☆(2/5)
  • 女子向けオススメ度:★★☆☆☆(2/5)
  • 出題元:SAPIXの5年生の国語テキスト
  • 作者について:説明不要の有名人ですが、作家としても優秀です。
  • 喩えや味わい深い表現が小学5年生には少し難しいですが、これが読めるようになれば中学受験にも対応できるはずです。
  • この作品について:少年の心理を繊細に描写した短編集です。単純に「ここで誰々はこう思った」という国語の受験問題を解くための教材としてでなく、「美しさとは何か」「読書の楽しみとは何か」を感じ取りながら読むことのできる小説です。
  • 引用:『八年前といえば、まだ父が生きているころだ。その時シリウスを出発した光がもうすぐ地球に届く。宇宙は巨大なアルバムだ。ぼくらは宇宙の隅っこに取り残されているわけじゃない。ぼくは’「勇気」を取り戻した。』

 

市川信夫『たった一つのおかし(「戦争と平和」子ども文学館2)』

  • 難易度:★★★☆☆(3/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★☆☆(3/5)
  • 女子向けオススメ度:★★★★☆(4/5)
  • 出題元:SAPIXの5年生の国語テキスト
  • 第二次世界大戦下の子どもの姿を描いた物語をまとめたものです。この全集は入手しづらくなっています。上記画像の20巻には有名な「二十四の瞳」が収録されています。
  • 戦争にまつわる物語文は今でも出題されます。特殊な状況を描いているものなので、ある程度の読書経験がないと、状況や心理を読み違えてしまいます。慣れておいたほうが良いでしょう。
  • 『「おかあちゃん。おとなりのおにいちゃんどうしたの」けい子ちゃんは、じっとけんちゃんを見ていました。けんちゃんは、はずかしくて顔をまっ赤にしました。「おとなりのおにいちゃんね。けい子ちゃんのところへ配給になったおかしを食べちゃったんですって」「ふーん。けい子のおかし」そういいながら、けい子ちゃんは、ときどき遊んでくれるおとなりのおにいちゃんが何をしたのかまだわからないようすで、ふしぎそうな顔をしておばさんにききました。「あかあちゃん。おかしってなあに」おばさんとおかあさんは、はっとしたように顔を見あわせました。「まあ、この子は二つになるのに、おかしを知らないんです。かわいそうに」』

 

斎藤了一『源じいさんの竹とんぼ』

  • 難易度:★★☆☆☆(2/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★★☆(4/5)
  • 女子向けオススメ度:★★★☆☆(3/5)
  • 出題元:SAPIXの5年生の国語テキスト
  • 大正生まれの児童文学作家です。作者の温かい人柄が伝わってくるような、やさしい物語が特徴です。文章自体は古さをあまり感じさせませんが、古い日本の風景や生活習慣を理解できます。
  • 『手さきのきような源じいさんでしたが、たったひとつ、にが手なものがありました。さいほうです。源じいさんが着物のつくろいをしていると、ぼくらは、ほんきになって、いってあげたものでした。「おじいさん、およめさんをもらいなさいよ。」すると、源じいさんは、はげた頭をつるりとなでて、「はは、なーるほど!そいつは気がつかなかったわい。」ほんとうに、うっかりしていたというふうに、ぼくらの顔を見まわしました。「ぼうずたちは、りこうもんだなあ。」源じいさんは、いいおえると、大声で笑うばかりでした。』

 

森浩美『家族の分け前』

  • 難易度:★★☆☆☆(2/5)
  • 男子向けオススメ度:★★☆☆(2/5)
  • 女子向けオススメ度:★★★★☆(4/5)
  • 出題元:SAPIXの5年生の国語テキスト
  • 「家族」を描くことに定評のある作者の短編集です。やさしく、読みやすい短編集が数多く出版されているので、気に入ったら、他のものも読んでみましょう。森浩美さんの本はこちら。
  • 『舞い上がった鳥は飛行場の上を旋回すると、日差しの中に飛び去った。「さあて、もう一月も終わりだなあ。寒い寒いって言ってもこういう日もあるし、すぐに春がやってくる」「そうだね」お父さんは両膝を手で軽く叩くと立ち上がった。「翼、お父さん、来週から会社に行くよ」「え、大丈夫・・・なの?」僕はおどろいてお父さんの顔を見上げた。「さて、どうだかなあ・・・」お父さんは一度首を捻って苦笑いした。「でもな、お父さん、気づいたんだよ」それから視線を遠い空へ向けると、お父さんは穏やかな表情で言った。「それでも鳥は空を飛ぶんだよ」』

 

後藤竜二『キャプテンはつらいぜ』

  • 難易度:★☆☆☆☆(1/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★☆☆(3/5)
  • 女子向けオススメ度:★☆☆☆☆(1/5)
  • 出題元:SAPIXの5年生の国語テキスト
  • 1980年代の雰囲気がよく出ている物語です。この時代の不良の言動など、現代っ子にはつかみにくいところがありますが、物語自体は面白く、どんどん先を読みたくなります。
  • 『「一人で、なにをいきがってんだよ。そりゃ、ブラック=キャットは、いまんとこ、たしかにおんぼろだけどな、コンクリート相手にやるよりは、よっぽど楽しいよ!」いい終わらないうちに、バシッと秀治の平手がほおにとんできた。(これでいいんだ。)と、ぼくは秀治とにらみあって思った。いままで、いっぺんもブラック=キャットにさそわなかったうしろめたさが、それでふっきれたと思った。(やっと、五分でつきあえる。)そう思った。「にげるなよな。おれだって、勝負するぞ。」』

 

村中李衣 他『新・少女の童話五年生』

  • 難易度:★★☆☆☆(2/5)
  • 男子向けオススメ度:★★☆☆☆(2/5)
  • 女子向けオススメ度:★★★★☆(4/5)
  • 出題元:SAPIXの5年生の国語テキスト
  • 丁寧で、偽りがなく、温かい文章でお勧めです。『新・少女の童話五年生』は絶版ですが、村中李衣さんの本は数多く、色々な年齢の生徒が楽しめると思います。
  • 『「どうしてえ?どうして駅員やめて、うどん屋なんかになんなきゃいけないの?」まっさきに、とみこが大きな声をだした。今月はじめから野田駅の構内に、立ち食いうどんのスタンドが建てられているのは知っていた。けれど、まさか父がそこで働くことになるなんて、思ってもみなかった。野田駅は、こんどから、機械をつかって、列車の発着を管理するのだそうだ。そのあたらしいやり方だと父が手旗やランプをつかってホームであいずをする仕事は、いらなくなるという。』

 

川上途行 『僕とあいつのトライアル』 

  • 難易度:★★★☆☆(2/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★★☆(4/5)
  • 女子向けオススメ度:★★★☆☆(3/5)
  • 出題元:SAPIXの5年生の国語テキスト
  • 小学生向けの文章は5年生の途中から大人っぽいものに変化していきます。それは善悪のはっきりした幼稚な世界を抜け出して、矛盾だらけの大人の世界を少しずつ理解していくことです。その入門としてこの文章はおすすめです。
  • 男子向けの文章でありながら、優しい文章で、サラッとした世界観なので、女の子にも読みやすいと思います。
  • 『心ここにあらずだった僕に、里山先生はとっておきの最高の笑顔で続けた。「小野塚くんは、いろいろ大人の世界に引っ張り出されてたいへんかもしれないけど、もっと子どもらしくしていいのよ。先生、心配しているの。あなたには少し子どもらしさが足りない気がする。何か困ったことや心配なことがあったら、いつでも言ってね」里山先生からしてみれば、生徒想いの最高の言葉でこの場を締めたはずだったんだと思う。でも、ぼくにとっては、もう我慢の限界だった。「先生、子どもらしい子どもが好きなら、人形相手に授業したらどうですか?大人っぽいとか子どもらしいとかで子どもを判断していることのほうがよっぽど子どもっぽいと思いますけど」』

 

高橋うらら 『いつも見ていて』 

  • 難易度:★★☆☆☆(2/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★☆☆(3/5)
  • 女子向けオススメ度:★★★☆☆(3/5)
  • 出題元:サピックスオープンに出題
  • お母さんが亡くなるのですが、登場人物も文体も明るいので、重さを感じません。男子にも女子にも読みやすく、ストーリーの面白さに引き込まれる本です。
  • 『「お姉さんね、七月に手術するまで、目が不自由だったんですって。それで、目が治ったら結婚しようって、ずっと前から待っていてくれた人がいたんですって。アイバンクっていうところから角膜をもらったらしいわよ」それをきいた高志が、ゆっくりと、ふりかえりました。「アイバンク?七月?」高志は、もしやと思って、美都子にたずねます。「いったい、どんな人からもらったか、いってなかった?」』

 

阿部夏丸『泣けない魚たち』

  • 難易度:★★★☆☆(3/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★★★(5/5)
  • 女子向けオススメ度:★★★☆☆(3/5)
  • 出題元:SAPIXの5年生の国語テキスト
  • 開成にも出題されたことがある、中学入試で頻出の作家です。阿部夏丸さんの本
  • 転校してきたこうすけは、両親がおらず、荒っぽい少年でクラスに馴染めずにいる。主人公のさとるはこうすけと仲良くなるが、その関係は誰にもいわない約束だった。
  • 子供向けの物語は安っぽいパターンにはまりがちですが、阿部夏丸さんの描写は爽やかかつ鮮やかで、深みもあります。おすすめです。
  • 『「なあ、さとる。こうすけとは仲がいいのか?」「・・・」僕は、返事をしなかった。「そうです」といえば、こうすけを裏切ることになるし、「いいえ」といえば、先生にうそをつくことになるからだ。「なんだ。だんまりか、それもいいさ。なにもいわないってことは、最大の意思表示でもあるわけだからな」どちらにしても、僕たちの関係がばれてしまったことに、まちがいはなかった。「こうすけも、ちょっと変わったやつだが、いいやつだよ。お前も、そう思うだろう」』

 

魚住直子『Two Trains ~とぅーとれいんず~』

  • 難易度:★★☆☆☆(2/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★☆☆(3/5)
  • 女子向けオススメ度:★★★★★(5/5)
  • 出題元:SAPIXの5年生のマンスリーテスト
  • 作家:児童文学作家。児童文学の賞を受賞したり作品が映画化されたりと人気。ポップで丁寧な文体。魚住直子さんの本は多くクオリティが高いので、気に入れば他の作品にもチャレンジしてみて下さい。有名なのは『非・バランス』。
  • 作品:クラス内の女の子同士の人間模様というのは、女性児童文学作家の典型的なテーマですが、比較的新しい文章だけあって読みやすく、引き込まれるようなテクニックを駆使して描かれています。
  • 『親友になりたい!そう夏美が思ったのは、五年の一学期が始まって間もない四月の休み時間だった。同じクラスの女子の祖母が亡くなったと連絡が入り、わっと泣き出したその子を、偶然その場にいた夏美もふくめた四人が、げた箱まで見送ることになった。げた箱に着いたとき、ふいに、つきそっていた四人の中の一人が、口を開いた。「そんなに悲しまれるなんて、おばあちゃん、きっとすごく幸せな人生だったんだね。」かっこいい!夏美は思わず、今いった子を見た。』

 

別司芳子『てのひら咲いた』

  • 難易度:★★★☆☆(3/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★★☆(4/5)
  • 女子向けオススメ度:★★★★☆(4/5)
  • 出題元:SAPIXの5年生の復習テスト
  • 作家:児童文学作家。1960年生まれで、最近も本を刊行しています。
  • 作品:母が小学校の先生で、その娘が同じ学校に通うという、比較的珍しいストーリーです。母のクラスの子供たちに様々な問題が起きますが、乗り越えていきます。
  • 『いつだってそうだ。学級で何か事件が起こると、真っ先に隼人が疑われる。学級の各係にはそれぞれ役割分担が決まっているように、隼人には犯人とか、張本人とかいう役割が決まっていた。自分じゃないと言っても、だれも信じてはくれない。隼人はトイレの前を素通りすると、大きな足音をたてて教室に入った。放り投げるようにランドセルを床に置く。「織田君、おはよう。ほらほら、教科書は机の中、ランドセルはロッカーよ。」玲子先生がいつもと変わらない笑顔で、あいさつをしてくれた。「うぜぇ、うぜぇ、あーうぜぇ。」行きどころのないくやしさが、自然と言葉ににじみ出る。』

 

くすのきしげのり『ライジング父サン』

  • 難易度:★★★☆☆(3/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★☆☆(3/5)
  • 女子向けオススメ度:★★☆☆☆(2/5)
  • 出題元:SAPIXの5年生の復習テスト
  • 作家について:児童文学作家。多くの作品を発表しています。かなり小さい子向けの本から、『あなたの一日が世界を変える』のように、大人が読んでも面白い本まで書いています。
  • 作品について:『ライジング父サン』に登場する絵本作家の父親は作者自身がモデルです。半身不随になった経験を生かして書いているので、病気で苛立つ場面などがリアルです。時に理不尽にもなる大人を描いているので、児童文学や絵本の世界観から脱却し、大人の本を読み始めるのにちょうど良いと思います。とはいえ、それほど読みにくいわけではなく、結局は児童文学らしく爽快感のある展開になるので、安心して読むことができます。
  • 『「ちょっと・起こして・くれ。自分の足で・立って・みようと・思うんだ」ぼくらは息をつめて、いのるように父さんを見つめた。父さんが静かに両足を下ろした。(ドサッ)立ち上がりかけた父さんの体が左へ大きくかたむき、そのままベッドにたおれた。「どうして・みんな・だまって・見て・るんだ!支えて・くれなくちゃ・立てない・だろうが!」「だって、自分で立ってみるっていったじゃない」「立て・ないん・だよ!立てない・から・・・やってみようと・したんじゃ・ないか。そんなことが・わからない・のか!」父さんがどなった。』

 

重松清『小学五年生』

  • 難易度:★★★☆☆(3/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★★☆(4/5)
  • 女子向けオススメ度:★★★☆☆(3/5)
  • 出題元:多くの入試問題。早稲アカのテキスト
  • 作者について:人気作家。子供向けのものが多い。
  • この作品について:少年の心理だけに注目して、背景や季節感や周辺人物を徹底的に捨象している。それでも違和感なく、リアルであるのは作者の筆力による。余計な要素がないので読みやすく、心理を答える問題の練習として読んでみるとよい。
  • 『買い足した回数券の三冊目が—もうすぐ終わる。少年は父に「迎えに来て」とねだるようになった。車で通勤している父に、会社帰りに病院に寄ってもらって一緒に帰れば、回数券を使わずにすむ。「今日は残業で遅くなるんだけどな」と父が言っても、「いい、待ってるから」とねばった。母から看護師さんに頼んでもらって、面会時間の過ぎたあとも病室で父を待つ日もあった。それでも、行きのバスで回数券は一枚ずつ減っていく。明日からお小遣いでバスに乗ることにした。毎月のお小遣いは千円だからしばらくはだいじょうぶだろう。』

 

黒川裕子『となりのアブダラくん』

  • 難易度:★★☆☆☆(2/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★☆☆(3/5)
  • 女子向けオススメ度:★★★☆☆(3/5)
  • 出題元:サピックスの5年テキスト。
  • 作者について:比較的最近の児童文学作家。海外生活があり、この作品もそうした視点を活かして描かれている。現代的な話題・グローバルな視点という意味で、これからも出題が増えそうな作家。
  • この作品について:編み物が趣味の(男の)主人公。そうした趣味を恥ずかしく感じていた所に、パキスタンからのイスラム教徒の転校生がやってくる。宗教・ジェンダー・個性といったこれから出題が増えそうなテーマを扱った物語。流行りのテーマを扱っているというだけでなく、丁寧で無理のない心理描写。
  • 『「そういやさ、アブダラくんが・・・」「「アブダラくん?」」ふたり同時にぼくを見る。しまった、と口を押さえる。ばかはおまえだ。「・・・アブドゥ兄ちゃん、またアブラ・カタブラやったんだ」アシールが顔をしかめる。美夜がふきだす。「なにそれっ。呪文?」「もう、はずかしい」アシールが、うつむいたままで、つぶやいた。「前の学校でもやってたみたい。パキスタンにいるとき、駐在の日本人にウケたらしくて。わたしが学校になじめるように、まずは自分からとかいって。本当は、やなくせに・・・」』

 

辻仁成『そこに僕はいた』

  • 難易度:★★★★☆(4/5)
  • 男子向けオススメ度:★★★★★(5/5)
  • 女子向けオススメ度:★★★★☆(4/5)
  • 出題元:サピックスの5年テキスト。
  • 作者について:芥川賞だけでなく、フランスでも受賞歴がある有名作家。キャッチーなのに安っぽくなく、繊細で、真実味のある文章。
  • この作品について:作者の少年〜青年時代を描いたエッセイ。エッセイとあるが、文体は物語文に近い。受験ではほとんど物語文として登場する。以下の引用は『そこに僕はいた』というこのエッセイ集の表題作。
  • 『思い起こせば、僕には片足の友達がいた。あの少年とどうして仲良しになったのかは思い出せない。気がついたら僕たちのグループの中にいたのだ。片足の少年の名字は何故かもう思い出せない。あーちゃんと呼んでいたのでそっちの印象の方が強いのだろう。あーちゃんは右足の付け根から先が義足だった。走るたびに義足の金具の音がきいきいと響いた。僕は最初その音がすごくいやだったのを覚えている。歯医者の治療器具の音のように耳奥を引っかいたからだ。』
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