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【中学受験】国語の記述問題について

中学受験の国語に関しては、誤った考え方に基づいていると、いつまでも成績を伸ばせない場合が多いように思います。特にご両親が国語に苦手意識があったり、理系科目を優先するあまりに国語を軽視している場合に顕著です。この苦手意識と過小評価はルーツを同じくしているだけに厄介なのですが、中学受験において国語が算数と同程度(あるいはそれ以上)の重要度を持つことは否定できません。

今回は特に国語の記述問題について焦点を絞って書きます。まずは5つの基本ポイントをまとめます。

5つの基本ポイント

① 記述はやらないと伸びない→毎週の記述の宿題を必ずこなす
② 記述の宿題は形だけ終わらせても全く意味がない → 答えは親が預かる・一緒に採点する・自分なりの答えを作る
③ テストの記述問題は飛ばしてはいけない→必ず全て解く
④ 字数不足は真剣に取り組んでいないと判断できる→指定の字数(解答欄)の8割は埋める
⑤ 記述の字が汚い・欄からはみ出しているのは逃げの姿勢の表れ→必要な時間数を確保して落ち着いて解く

どれも平凡なことです。ですが、国語を苦手と感じている生徒は、この当たり前のことができていないはずです。ですからまずは、この5点をチェックしてみて下さい。半年以上この基本ポイントを守って勉強しているにも関わらず、記述問題が解けるようにならない場合は、文末の『それ以外の要素』をご覧ください。

以降、5つのポイントについて、それぞれ詳しく説明していきます。

 

① 記述はやらないと伸びない→毎週の記述の宿題を必ずこなす

SAPIXでも他の塾でも、国語の記述の宿題(国語B)を甘く考えて、後回しにしている方がとても多いです。全くやらないという生徒も相当数います。そして毎週の記述の宿題をこなしていないにもかかわらず、「記述問題が解けなくて困っている」と言うのです。僕は「まずは宿題をやろうか。できるようになるかどうか判断するのはその後だよ」とアドバイスします。

問題は宿題を実質的にやっていないにも関わらず、ある程度勉強している気になっている、あるいは勉強しなくても国語は伸びるのではないかと思っていることです。国語を勉強しなくても出来る子は確かにいますが、それは質の高い本(漫画や図鑑や簡単すぎる本は含まない)をたくさん読んでいる子に限ります。これはつまり、最高の勉強を毎日何時間もしているのと同じです。こうした子でも記述の勉強はある程度しなければなりませんし、まして良い読書ができていない子が宿題もしなければ、成績が伸びるはずがありません。

② 記述の宿題は形だけ終わらせても全く意味がない → 答えは親が預かる・一緒に採点する・自分なりの答えを作る

国語の記述問題は「勉強のやり方」で成果に差が出やすいです。「毎週の宿題をしっかりやっているのに記述が書けるようにならない」という生徒がいます。そうしたご家庭では国語の記述の宿題を子供任せにしている傾向にあります。生徒が放任された状態で記述問題の宿題をする場合は、以下のどれかのパターンになります。

ア 答えを写すだけ(0点)→やっていないのと同じ→答えは親が預かり、見ている前で解かせる
イ 採点していない(0点)→やっていないのとほぼ同じ
ウ 採点が甘い(30点)→ほとんどの子がこれ
エ 採点後に自分の言葉で解答を書いていない(=解答の答えを丸写し)(50点)

アとイはやっていないのと同じなのですが、特にイなどは「やっているのに伸びない」という気持ちになりがちなので、いっそやらない方が清々しいでしょう。

ウに関しては、小学生が1人で勉強する場合、正しい採点をすることは難しいです。ご両親と一緒に採点するのが良いと思います。「ここは○点でいいかな」「ここはもっと貰ってもよいでしょ」などと相談しながら点を決めるとよいです。『ご両親が採点する』のではなく、『ご両親と一緒に採点する』のがよいです。

さらに言えば、解答に載っている採点基準で、例えば同じ3点の配点となっていても、『絶対に外してはいけないポイント』と『字数に余裕がある場合に書けばよいポイント』があり、その重みは違います。この辺りはご両親に余裕がないと判断が難しい所ですが、記述は満点を目指すのではなく、『聞かれたことに答えているか』『読んで意味が分かる答えになっているか』に注意して採点してあげることが大切です。

エに関して、採点後に答案に含めるべきポイントを確認した上で、解答を閉じて、自分の言葉で答案を書き直すことが大切です。これで文章構成力が付きます。

③ テストの記述問題は飛ばしてはいけない→必ず全て解く

算数のテストでは解ける問題から解き、正答率の低そうな難問はスキップするのが定石です。その考え方を援用して「国語の記述問題は時間がかかる上に、僕(私)はどうせ記述問題でそれほど得点できないからいつもとばしている」と、もっともらしい主張を展開する生徒がいます。しかし残念ながら、テストの記述問題(や抜き出し問題)がいつも空欄の生徒は絶対に国語の成績が伸びません。このことがこの記事の最重要ポイントです。記述問題に限らず、国語の問題は全て時間内に解かねばなりません。「解けそうな問題だけ解く」は通用しません。

テストで記述問題をとばしている生徒は、普段の勉強(毎週の宿題)の段階から、真剣に取り組んでいません。つまり①②ができていないんですね。テスト時に記述問題をスキップするのは、時間がないからではなく、普段から取り組んでいないために解く習慣と自信がなく、心理的に逃げてしまっているからです。

そうした子はえてして「選択問題に時間をかけて全部正解すれば良い」というナイーブな言い訳をするのですが、国語の選択問題は長く考えれば正解できるというものではありません。学年が上がり、文章と問題が難しくなると、微妙な選択肢も増えて、優秀な子でも選択問題だけで十分な得点することはできなくなります。

そもそも150点満点のテストで記述が30~40点程度占めるとして、それを疎かにして残りで110~120点の範囲で戦うのは無謀です。それは少し計算してみれば分かります。「国語は苦手だから5割得点できれば満足」という生徒であっても、40点分の記述なしで150点中の75点を得るためには、残りの68%を得点する必要があり、苦手なはずの国語で平均的な正答率を求められる『縛りプレイ』になってしまっています。

そもそも「国語は5割の得点で満足」などという生徒はほとんどいません。記述を書かない生徒であっても、「偏差値50は欲しい」「αクラスに上がりたい」などと言うのです。であれば、記述以外で8~9割程度の得点が必要になるでしょう。

漢字を一切解かない子が中学受験に合格する可能性がないのと同様に、記述問題を書かない子が中学受験に合格することはありません。これは国語の配点が低い学校であっても変わりません。「国語の配点が低いから記述を書かなくても理系科目で補える」という論理も大いに間違っています。どの生徒も自分の実力以上の学校を第一志望校に据えているのであり、第一志望校に合格できる生徒は、数点の差を活かして合格するからです。さらに理数系を重視する学校は、理数系が得意な子が多く受けますし、理数の問題が難しくなります。そうした学校に合格できる生徒は、国語が出来る生徒といっても過言ではありません。

長くなりましたが、「テストの記述問題は必ず書く」ということを習慣にして下さい。

④ 字数不足は真剣に取り組んでいないと判断できる→指定の字数(解答欄)の8割は埋める

生徒がテストで国語の記述問題を全く解いていない場合、③を理解されているご両親は「記述問題もしっかり解きなさい」と叱ります。結果、記述を書きたくない生徒は、よく考えず本文から抜き出すような形でとりあえず答案を書き、得点できなかった場合は「考えたけど分からなかった」と言い訳します。これはテストに限らず、普段の家庭学習でも同じです。

字数指定に満たなければもちろん0点ですし、厳密な字数指定がないとしても例えば3行の解答欄に1行しか書いていなければ、内容に関わらず0点にされて文句は言えません。僕が採点官であれば、そのような答案は読みもしません。

もちろん字数指定というのは、出題者が想定する解答を踏まえているものなので、字数に満たないのは書くべきポイントが足りていないからです。

字数不足の解答が良くない最大の理由は、「記述は面倒だ」「書く必要ない」「適当に済ませればいいんでしょ」という逃げの姿勢が現れているからです。普段から字数をしっかり書くという訓練は、「記述問題でしっかり得点するんだ」という決意を養うことにつながります。

⑤ 記述の字が汚い・欄からはみ出しているのは逃げの姿勢の表れ→必要な時間数を確保して落ち着いて解く

字が整っていないのは落ち着いて記述問題と向き合っていない証拠で、④の字数不足と共通した『逃げの姿勢』の表れです。

「字が汚くても優秀な生徒がいる」という破綻した論理を振りかざす方もいますが、優秀な生徒の大半がある程度整った字を書くことは厳然とした事実です。大人が自分のためにメモを取るのとは話が違います。

国語の記述の宿題を毎週こなしていくのはとても大変です。2時間程度はかかるでしょう。ボリュームに比して短い時間で宿題を終わらせようとすると、字も汚くなりますし、②で述べたようなポイントも守れなくなります。一気に解けない場合は、休憩を挟んだり、別の曜日に続きをやるようにして下さい。

 

まとめ

以上、5つの基本ポイントを挙げました。もう一度まとめます。

① 記述はやらないと伸びない→毎週の記述の宿題を必ずこなす
② 記述の宿題は形だけ終わらせても全く意味がない → 答えは親が預かる・一緒に採点する・自分なりの答えを作る
③ テストの記述問題は飛ばしてはいけない→必ず全て解く
④ 字数不足は真剣に取り組んでいないと判断できる→指定の字数(解答欄)の8割は埋める
⑤ 記述の字が汚い・欄からはみ出しているのは逃げの姿勢の表れ→必要な時間数を確保して落ち着いて解く

言い方を変えて、まとめ直します。

1⃞ 宿題を全てやる
2⃞ 答えを写さない
3⃞ しっかり採点をする
4⃞ 自分の言葉で答案を書く
5⃞ テストの記述問題は必ず解く
6⃞ 字数指定の8割以上書く
7⃞ 整った字でかく

いかがでしょうか。平凡なことですね。国語の勉強の基本は何十年も(おそらく有史以来)変わっていないのだから、平凡なことをコツコツとこなして下さい。SAPIXのαクラスの子は、そうして毎週の記述の宿題を解き続けて、何年にもわたり力を蓄えているから、テストでも得点できるわけです。「国語の記述ができない」と悩んでいる子(ご両親)は、以上のポイントに気を付けて、まずは半年時間を確保してみて下さい。「じぶんには国語の才能がない」「国語の勉強は意味がない」と結論付けるのはその後です。

 

それ以外の要素

① ご両親が見ている時間がなく、上記基本ポイントを守らせることができない
② ご両親がどう採点・指導してよいか分からない
③ 読解力が不足し過ぎて、記述以前に本文の意味が理解できない
④ 精神年齢が幼過ぎて文章についていけていない
⑤ 落ち着きがなく、まとまった文章を書くことができない

 

①・②に関しては、アウトソーシングするしかありません。放っておいて国語力と記述力が伸びることはありません。記述問題の指導は、教師の差が出やすい分野です。ある程度の時間を割いて、信頼できる教師に見てもらうとよいでしょう。僕がSAPIXの生徒に国語の記述を指導する場合は、毎週の宿題を終えるのに2時間程度かかることが多いです。

③・④に関しては、対策は読書に限られます。親子の有意義な会話を増やすことも大切なのですが、意識して大幅に変えることは難しい習慣なので、結局は良い本を提供し読ませる他ありません。

読書に関しては、言いたいことが多過ぎて書ききれないので、別の記事などを参考にして頂きたいのですが、塾や過去問に出題された文の中で、本人が興味ある本を購入するのが基本です。そうする事で年齢に合った本、『ある程度良い本』を無理なく読ませることができます。漫画・図鑑は悪くないですが、読書に含めてはいけません。遊び・休憩の時間に読んでください。

また中学受験を目指しているならば、公立の小学校で読ませているような本や一般にその年齢向けとされている本はレベルが低過ぎるので、注意してください。

ライトノベル・擬似科学・啓発本・有名人の書いた本・雑誌も勉強になりません。電車の広告で『何十万部突破!』などと宣伝されている本も同様です。ご両親がそうした本ばかり読んでいる場合、子供の国語力を伸ばすのは難しいです。僕は多くのご家庭にお邪魔してその本棚を見てきましたが、蔵書の質と子供の学力は比例します。親が質の高い読書をしていないのに、子供ができるはずがありません。中学受験を目指すご両親は、ご自身も知的なバックグラウンドがしっかりしている場合がほとんどですが、もしも自信がなければ親子で意識的な読書の時間を毎日取ることをお勧めしています。「パパ(ママ)はこの本を頑張って読むから、君はこの本を読んでね」と率先垂範してください。

⑤に関しては、歳をとることで落ち着くこともありますが、少しずつでも実際に取り組むことで改善します。長時間にわたり大量の問題を解かせると嫌になってしまうので、1回1問でよいので、しっかり取り組むとよいでしょう。

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