【Q】
SAPIXのアルファクラスに通う新5年生の母です。日々、塾の勉強に追われています。ですがSAPIXのテキストを繰り返し学習するだけでは、成績が伸びなくなってきています。苦手な問題は4,5回と徹底的にこなしているのですが、思考力問題や応用問題、興味・関心を問う問題がだんだん増えていることが原因ではないかと思っています。
新聞を読んだり、本を読んだり、算数の思考力問題にじっくりと取り組んだりといった勉強に軸足を移すべきでしょうか。
先日、家庭教師の先生と応用問題を一緒に解いたところ、とても楽しかったようです。しかし、子供の知的好奇心を伸ばし、視野を広げて勉強していると、他の宿題をやりきる時間がなくなり、追い詰められてしまうような気がするのですが、他所のご家庭ではどのように対処なさっておられるのでしょうか。
【A】
前提として応用問題まで解ける生徒、自分の好きな教科を塾のレベルを超えて楽しんで学べる生徒というのは、塾で話を聞いてくるだけで基礎は大体理解できていて、家庭学習が早く終わるということがあります。SAPIXは5年生になると、4年の時よりもかなり教材の量が増えるので、今の段階でギリギリだと、今後破綻する可能性があります。
とはいえ、塾で上位をキープし難関中学を目指している生徒は時間に余裕がないのは確かです。知的興味を広げたり思考力問題に時間をかけると、基礎問題をやる時間がなくなるというのは、多くの方が悩む問題だと思います。
SAPIXに通う生徒の算数に関して言えば、決まった解き方に固執してしまっている生徒がとても多いです。効率良い解法を暗記する勉強はとても重要ですが、難関校ではその穴を突くような問題を出してきます。塾で一般的に教えられている方法では解きにくかったり、そもそも見たことの問題を出したりします。色々な解き方を受け入れたり、自分で解法を編み出す習慣がないまま、できない問題を繰り返し解く勉強だけに偏っているのであれば、何も教わらないで徹底的に考える勉強も取り入れるべきです。毎週1問20分程度でも良いでしょう。ポイントは『どんな解き方をしてもよい』ということです。全部書き出してもよいですし、数値を当てはめてもよいです。そして答え合わせをする時には、論理的に正しい方法を理解してください。
もちろん基礎がまったくできていなければ、絶対にそちら優先です。結局は『生徒の様子をよく見てバランスを取る』しかないのかな、と感じています。『生徒の様子をよく見る』というのは、テストの結果を見るだけではありません。一緒に問題を解いたり、どのように解いたかを生徒に説明させる中で、生徒の考え方がおかしな方向に歪み、凝り固まっていないかを分析する必要があります。
教科ごとに対応を変えることも必要でしょう。例えば得意な国語は詰め込まず本を読むだけにして、苦手な理科は基礎を中心で思考力問題は解かない、ただ理科の中でも動物だけは好きなので、そちら方面は自由に伸ばしてやる、などといった感じです。
出来るだけ良い中学校に受かるという点に拘らない大らかなご両親であれば、大学受験やその先を見据えて、興味関心を重視すべきです。都市圏では中学受験が一般的ですが、地方では中学受験はなく、小学生の段階で塾で知識を詰め込むことはしません。それでも優秀な生徒は大学受験までに必要な受験知識を蓄えることはできます。
視野を広げる勉強・自分で考える勉強・本を読む時間を全く取れない、そうしないと塾の成績をキープできないというのは、小学生にとってかなり無理のある状況で勉強をしていることになります。受験期(6年生の後半)だけならばそれでもよいですが、小学生が半年以上そうした無理のある勉強をすると悪影響の方が大きいと思います。たとえ塾の勉強が遅れるとしても、考える習慣や読書習慣をつけた方が、長い目で見た時に有益だと思います。
とはいえ『興味関心を伸ばしてやる』『思考力・応用力を伸ばしてやる』といっても、興味関心、思考力、応用力は全て、基礎的知識があってのものですから、基礎やパターン問題を無視して良いことにはありません。やはり『様子をよく見てバランスを取っていく』ということになります。